夏闌り───

/小龍を連れておいでと夏雲に

/蝉蛻(せんぜい)を踏むを厭わぬことながら

/チチチチチと鳴いて天外へ宙へ

/蟻の列を蚯蚓尺足草叢へ

/百合の花咲くを待つをの頸を出し

/地這えもの胡瓜はさりげなく夜に

/一夜さに地這え胡瓜のさりげなく

/南瓜くん採りて日にちを書き添えぬ

/トンボうの湧き出るほどやお盆前

/枝豆の嬉し畑へいそいそと

/傾り落つ凌霄花(のうぜんかずら)夏闌(たけ)り

/生協にお盆御座れと苧殻(おがら)買い

/花火売り場の前でむずかる子どもかな

/索麺な日々草木(そうもく)もげんなりと

/訪看さん涼を払ひて玄関へ

/この上に隠元の種夏盛

/葉灼けてみなうらめしく空を見る

/はたゝ神音だけをさせ気を持たせ

/黒葡萄に断種万の道標(みちしるべ)

 

倉石智證

娘は富山(お仕事)から

黒部ダムを渡って立山へ。

/夏の娘や海見て山に登りにき

/立山やみくりが池に夏の朝

/立山に雷鳥荘を尋ね来て日帰り入浴白き濁り湯

/雷鳥荘隣りは地獄谷ぞかし這松の根ことごとく枯れ

/トロリーを乗り継いできてステーション立山連山雲の毛布に

/髪切ってばばおとなしくおぼこ顔

/硝子戸やばばの整髪夏座敷

/ヴェランダにカマキリ逃がす青臭し

/あちらではねぷた流しよラッセラー

/竿灯や額で回す粋い漢

/懐かしやハリスの旋風アメリカでガハハと笑ふそれでいいのだ

 

秋は静かに音なふ。

あなたは見たと云ふが

わたしは見てない

それどころかそんなところにはゐなかった

あなたは悠々とそんなところにゐて

指し示したり

ひよっとしたら指図したのかもしれない

子どもをそばに置くだなんて常套手段だね

そしてあのパラソルだ

夫人と女の子は遠く街の空を眺めてゐる

あたかもそしてそれがみんなここに繋がってゐるとでも云ふやうに

眼差しや着てゐるお洋服もパラソルも

とっくのとっくに昔のことなのに

あなたは見たと云ふし

わたくしは見たことが無いと云い張るが

なんどでも問いただされると

たちまちその時間は

ほら、ぼくの眼の前の窓の外にも広がって

女の子はおかあさんに口をきく

まだ見ぬとおい未来やお国に行って見たいだなんて

 

人形や実物のやうに私の前で動き出す

私の中での平気な相対性理論(笑)

あのひとたちはあのときほんたうにあそこにゐたんだ

 

倉石智證

1872、パリだなんて、

すぐちょっと昔のことだ。