2024,9,8岡村桂三郎『白澤24-1』

 

流れをよく知りたいと頭に鳥が巣を掛けた

見晴らしがいいばかりでなく

城砦はあらゆることに役に立つ

目ん玉が空っぽになって風がすーすーと通り抜ける

最初に石を積んだのは誰だろうか

村の入口で、そんな村がずーっと広がって

最初の種にせよやはり鳥か風が運んで来たとしか云ひやうがない

伝令がやって来れば一目でわかる

水面が大きく盛り上がり巨鯉の口が水面に現れる

平和とか疫病とかよく話し合おうと

すり減った石段を多くの人が上ってゆく

今では頭頂に巣があるなんて当たり前だけれど

黄色い麦畑が饗応する

城砦からは人間がゴマ粒のやうに落ちてゆくのが見える

遠くでは爆裂の音がついでに烟が立ち昇る

みんながひれ伏して天を仰ぐ

ありったけの正義をほんの掌に握って

まるで世界なんてけふの天気予報みたいなものだ

あったり、或いはまったく無かったり

 

ヴァレリー・ザルジニー元ウクライナ軍総司令官

英国王立防衛安全保障研究所で開催された地上戦カンファレンスにおいて、

西側諸国に対し、新技術の開発を進めて世界大戦の回避に努めるよう警告を発した。

 

2024,10,3 thedailydigest.

末の初物───

/お目見えや末の初物て云ふあたり

/アワダチソウここだけの話なんだけど

/南瓜、芋、いよいよ秋の深まれり

/痩せ秋刀魚やうやく一匹百円に

/朝顔もいまはの刻と空見上げ

/ボケ茄子は嫁も一緒に食べにけり

/紅はるか初物顔のうれしさよ

/新生姜これはこれはと酒の当て

/返り花ヒルザキツキミきみならく

ヒルザキツキミソウが

こんなに遅れて秋のトバ口に咲いた。

夜は来歴を云ひ

昼は眠ってゐる

まるで小動物か大きな獣のやうにも見える

なんで黙っていると夜の夜中に詰り云ひつのる

目と鼻が無くなればもはや混沌にも似ている

だいたいどこいら辺まで来ているのだらうと訝しむ

自分では分からないのだ

 

布団から動けないまま夜に取り乱す

「M、M、」と聞き馴染んだ名前を何度でも連呼する

「どうして誰も返事しないんだい」

脅かすつもりなのか

「おとーさんが動かない。おとーさんが動かない」

と聞いたこともない胴間声で呻き出す

1973鴨居玲「私の話を聞いてくれ」

 

生者死者に関わらず深い地下茎でつながっている者たちよ

呼ばれたら今に目覚めよ

あらためてわが身に撞着せよ

昼にこんこんと眠り

眼を皿のやうに見開いて

「わたしの話を聞いてよネ」と食い下がる

もはや使われなくなった乳房よ

港に揺蕩う老船よ

一刻も早く舫を解いて

朝の曙光のなかへ

わたしを引きずり出して欲しい

そこいら辺に蹲ってゐる闇よ、

まったくろくでなしメ

 

譫妄(せんもう)───

覚醒水準の低下の亢進、見当識障害、注意の散漫、判断力・集中力の低下、

思考や気分の不安定化、錯覚や幻覚などの意識障害が発生するようだ。

高齢者にはせん妄がしばしば出現するが、その状態像は認知症と重なる部分が多いため、高齢者の軽い意識障害は仮性認知症と呼ばれる。

 

倉石智證