誕生日。

ノベンバーステップス

/残菊の故に放恣になりしまゝ

/木の実落つみな寝たふりをして午前五時

/トランプがテレビ出るたびうそら寒む

/ノエル、跛行(はこう)してゆく十一月

/里芋や刺突の話聞きにけり

まるで里芋をさすようだと、戦地帰りの人は…

/芋穴を掘りて藁敷く冬用意

/鯛兜焼いて生まれを祝いけり

/乾杯は新酒がよろし誕生日

/百目柿吊るし小さく色づいて

/百目柿頷き合へり風吹けば

/紅葉散る後追いかけて紅葉散る

/灯籠の屋根に紅葉の乗りしまゝ

/剪定が済んで冬樹となりにけり

/鎌月の浮かびし冬の青の空

/生協に富士見て帰る誕生日

/ノベンバーステップスぼくはどこへ行けばいい

 

倉石智證

神楽初滑りは「ゲレンデオープン延期」に。

母の命日。

急ぎ帰れふるさとへ。

/悴んで延期の報せ初滑り

/神楽来て紅葉ばかりか雪垂(しず)り

/早出して神楽まで来て霙かな

 

けふはおふくろの命日だから、お袋が「けふは止めとけ」と云ったのかな。いそぎ帰れ故郷へ。十二峠にも雪は無い。津南、飯山を抜けて、千曲川には綱切橋、いつも気になってゐるが辺りは冬ざれてゐる。縁起でもないのかいや縁起がいいのか、滔滔と流れゆくものを目の端に、小布施まで来たら空は晴れた。けふはおふくろの命日だから長野道松本平の辺はご機嫌だな。常念を雲の中に見たら直に諏訪平へ。八ケ岳連山も天辺は砂糖菓子を振りかけたやうに真っ白に輝いてゐる。

「ともあきさんじゃない」「ひさしぶりだね」。名前を忘れずに呼んでくれた。凩は昨晩に、庭には山茶花が真っ盛りに咲いてゐる。さあ、さっそく落ち葉掻きをしなければ。

/カラマツの針やはらかく黄葉散る

/景物を伐ってものぐさ柿太郎

ある家ではせっかく柿が色付いて鈴生りなのを、

木の根元から伐ってしまった。

柿の色付くは迚も景物だ。

/トラック便 紅葉は後を従いてゆく

/紅葉山火事だ火事だと薄の穂

/クレーンの鶴首くらべる雪の富士

/雪富士や筋斗雲を従えて

/諏訪湖では紅葉は湖(うみ)の風の色

/紅葉狩りテント拡げて酒飲んで

/中央道紅葉黄葉で帰りにき

/いてふ散る其の黄落は止め難き

 

倉石智證

キノコ狩り。

大陸間弾道弾。

/茸採り山の奥へと誘へり

/雪紅葉いろはいろはと散りにけり

/茸採り獣臭だと友は云ひ

/山路来てなにやら可笑し茸採り

/林床に音のかそけさキノコ狩り

/茸採り蝶は山から飛び立たず

/茸採り最後は鍋に落としけり

/自前なら天下一品ナメコ汁

/地冷えて景色に雪の匂いかな

/ゲレンデは今かまだかと身がまへり

/山の端に冬樹は冷えて宅急便

/冬樹陽に赫赫と宅急便

/西船の河岸から魚野談義かな

/冬黙す流れ下れば千曲川

/大陸間翔んで世界の冬ざるゝ

intercontinental ballistic missile

 

倉石智證