なんだかひょいとね

ひょいと宙に手を伸ばす

なにか摘まむのかな

つらまへやうとして

蝶なのか、虫なのか

得意の文字なのかもしれない

 

ひょいとね

なにげなく

それでよく蹴躓かないものだ

ものが除けて通る

正面にあるものばかりでなく

つい脇にあるもの

上にあるものばかりでなくほら足元に咲いてゐるものとか

色とか匂いとかそんなものが気になる

 

ひょいとね

空から特段の果物でも採るやうに

歩きながら

あんまりにも自由な

とっても定型な歩き方ではないから

誰も従いていけない

 

大~きな野原あって今とって来たものを並べる

ひろ~い白い紙の上に文字が並んだ

あの人の場合はね

それを詩と云ふんだ

あの人にとって当たり前なんだらうけれど

不思議だね

 

倉石智證

/いっつも突然やって来る/鋭い痛みだ/初霜が皇帝ダリアに襲い掛かった/霜の冷気がダリアの葉っぱにしがみつく/6時過ぎに「おはやう」とダリアを見に行くと/葉叢はすでに縮れ始めてゐる/花も萎れかかってているものがある/お昼には励ましに花の下に佇む/葉叢に茶の枯れ色がにじんでくる/半分くらいがまだ花芽も残してうな垂れているのだ/いっつもどこか不安で/けふもあそこらで工事車両がエンジンをふかし/電線に取り掛かる工事人がクレーン車に乗っかって/遠目にもどうにも不安な構図だ/エンジン音が上がったり下がったりする/人の声が右往左往し/ぼくは早く工事が了はらないかなと思ってゐる/いっつも不安は突然噴出して来る/不意に携帯が鳴って/ショートステイからだった/施設にコロナが発生した/そんな不安なことを考えていたわけではないが/明日のショートステイは不可と告げられた/世の中は不意に向かうからやって来る突然のことばっかりで/だからカミサマ仏様とお祈りする/ケアマネさんが別の施設に案内してくれた/突然のことながらこればかりにはホッ/明日からのお出かけがふいにならずに済んだ/皇帝ダリアさ~ん/そっちも今しばらく天寿を全う/もうしばらくきれいな花を咲かせ続けてくれないか。

初霜以前の皇帝ダリア

 

倉石智證

 

誕生日。

ノベンバーステップス

/残菊の故に放恣になりしまゝ

/木の実落つみな寝たふりをして午前五時

/トランプがテレビ出るたびうそら寒む

/ノエル、跛行(はこう)してゆく十一月

/里芋や刺突の話聞きにけり

まるで里芋をさすようだと、戦地帰りの人は…

/芋穴を掘りて藁敷く冬用意

/鯛兜焼いて生まれを祝いけり

/乾杯は新酒がよろし誕生日

/百目柿吊るし小さく色づいて

/百目柿頷き合へり風吹けば

/紅葉散る後追いかけて紅葉散る

/灯籠の屋根に紅葉の乗りしまゝ

/剪定が済んで冬樹となりにけり

/鎌月の浮かびし冬の青の空

/生協に富士見て帰る誕生日

/ノベンバーステップスぼくはどこへ行けばいい

 

倉石智證