『芸人と俳人』(著)又吉直樹、堀本裕樹  2015年5月   集英社 | 生涯学生気分

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後期高齢者ですが「生涯学生気分」の境地で若々しく、知的な記事を発信して行きたいと思っています。

 雑誌「すばる」に2012年10月号から2014年10月号に連載されたものを加筆修正し単行本として出版したものなんですね。

 子供時代から言葉に関心を持ちノートに気に入った語句、フレーズなどをメモし、後年漫才のネタとしても参考にしたという又吉氏。尾崎放哉のフアンで自由律俳句めいたものは作っていたが、季語を重んじる五七五の定型俳句は、「難しくて、怖い」と思って敬遠していた。

 又吉氏は人前ではブラックコーヒーしか飲まない、砂糖やミルクを入れるとバカにされると恐れていた。実は、俳句には関心があったが、下手だと皆にバカにされるのではないかと考えていた。小説家太宰治のフアンらしい強い「自意識」の持ち主だった又吉さん。

 

 この又吉氏に香川春樹系の中堅の俳人で後年NHKの俳句番組の講師を務め、コーヒーは砂糖とミルクを入れるという堀本裕樹氏が、俳句の初心者である又吉氏に「季語の本意本情」、「俳諧連歌の発句から正岡子規の俳句の歴史」、「切れ、切れ字の意義」、「擬人法、遠近法」、「擬声・擬態語」など、俳句の歴史から俳句作成の姿勢、技術を、先人の有名な俳句を引用しながら要領よくかつ懇切丁寧に解説する。

 そして、歌人の穂村弘、書評家の中江有里らも交え、五人で句会を開くまでの段階まで、又吉氏の俳句は上達するんですね。

又吉氏にとって、俳句は落語の「饅頭怖い」であったんですね。

 

この本が出版されて11年、堀本氏も又吉氏も相変わらず活躍されていますが、その後の又吉氏の俳句作品を観賞してみたいですね。

 

 芸人で小説家である又吉氏のユニークにして繊細な感性にもとづく物言いも興味深く、このレクチャーのために毎回レジメを用意して臨んだ堀本氏の熱意もあって、単なる通り一遍の出来合いの安易な「俳句入門」の本でなく、俳句歴十数年の小生にも、素晴らしい復習になり、勉強となりました。

 

 実は小生にも、今更「俳句の初歩」をと、変な自意識をもってこの本を敬遠していましたが、図書館本ですが読んでみてよかったです。