『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(著)茜 灯里     2023年10月  集英社イン | 生涯学生気分

生涯学生気分

後期高齢者ですが「生涯学生気分」の境地で若々しく、知的な記事を発信して行きたいと思っています。

 

出版社内容紹介

●作家で科学ジャーナリストでもある著者が、原著論文をもとに執筆した「高い専門性」と「ニュース性」を併せ持つ記事29本を収録
●「海外の一流ビジネスパーソンは、科学の話題にも通じている。文系出身者でも『サイエンティフィック・アメリカン』を読んでいる」(本書より)。──ビジネスパーソンの科学教養をこの1冊で!
●ニューズウィーク日本版WEBサイトの人気連載「サイエンス・ナビゲーター」書籍化

【本書で紹介する主なトピックス】(目次より抜粋)
第1章 宇宙
若田光一宇宙飛行士に聞くSDGs/太陽フレア対策/アポロ計画・アルテミス計画/中国が月の新鉱物を発見/確認された太陽系外惑星が5000個超に
第2章 医療
新型コロナウイルスのこれまでと展望/インフルエンザでもmRNAワクチン/日本人の睡眠傾向とリスク/がん細胞だけ攻撃する免疫細胞/世界で進む「糞便移植」/ブタからヒトへの心臓移植
第3章 地球・環境
「ガイア理論」ラブロック博士の功績/地球内核の回転スピードとうるう秒/世界最大「謎」のカットダイヤモンド/飽和潜水法とはなにか/花見に迫る危機/国内唯一の地質時代名「チバニアン」
第4章 生物
両親がオスの赤ちゃんマウス誕生/オスだけ殺すタンパク質「Oscar(オス狩る)」/生魚の寄生虫アニサキスの対策法/サイボーグ・ゴキブリが災害救助?/イルカの知られざる一面/『鬼滅の刃』に登場する「青い彼岸花」の秘密
第5章 アートとテクノロジー
対話型AI「ChatGPT」の危険性/「世界終末時計」の問題点/AI鑑定とルーベンス作品の真贋論争/音楽と科学の深い関係/核融合エネルギーの開発状況/未来予想図の答え合わせ

【著者プロフィール】
茜灯里(あかね あかり)
作家・科学ジャーナリスト/博士(理学)・獣医師。東京生まれ。東京大学理学部地球惑星物理学科卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。東京大学農学部獣医学課程卒業。朝日新聞記者を経て、東京大学、立命館大学などで教鞭をとる。著書に、第24回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作『馬疫』(2021年、光文社)、『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)。分担執筆に『ニュートリノ』(2003年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007年、化学同人)など。

 

新聞の科学記事とかテレビの科学教養番組、結構あるんですね。私もNHKの『サイエンスZERO』とか『ヒューマニエンス』などはよく見ています。

 

今82歳の小生が振り返ってみると中学、高校生だった1955年から1961年代は、遺伝といえばメンデルの法則、物質の根源も量子概念はなく原子、分子どまりで元素周期表の丸暗記、生物も炭酸同化作用は記憶にあるが、mRNAが活躍するたんぱく質合成の「セントラルドグマ」理論なんてなかった。もっぱら生物は暗記物という感じだった。

 

そもそも二重らせん構造のDNAの発見が1953年ですから、分子生物という概念もなかった。要は、この数十年で科学が進歩し、若い人々はともかく高齢者層は科学知識、いわゆる科学リテラシーが極端に低い。学生でも生物、化学、物理、地学などをまんべんなく学んでいる時間はないらしい。医師志望なのに「高校生物」を履修していない学生もいたとか、冗談めいた話もある。

 

退職後、60代から遺伝子、免疫などの再学習と「高校生物」の教科書・参考書を一覧したら、その精細さとボリュームに驚愕しあきらめた。ユーチューブなどの中学性向け学習講座番組にブルーガイドブックスなどの参考書を読み、現代で人気の量子論、遺伝子、分子生物、宇宙天文学理論のひととおりの知識を習得し、新聞の「科学コラム」記事ぐらいは興味を持って読めるようになった。(高校で物理を履修していなかったのでトラウマがあった。)

 

そんな小生の経験からいうと、政治、経済などの社会科学系知識をテレビでやさしく解説して人気の元NHK社会部記者の池上彰氏のような存在が、自然科学の分野にももほしいと思っていました。

その観点からは、本書の企画は実に時宜を得た出版だと思う。シリーズ版にして適宜、続編を出版してほしい。ビジネスパーソンの教養向上だけでなく、一般市民にもわかりやすいようなものが欲しい。自然科学は分野が多様でかつ専門的なので何人もの「池上さん」が必要かもしれませんが。

 

コロナウイルスで有名になったPCR検査、mRNAワクチン、そして先日のH3ロケット打ち上げなどのわかりやすい科学的な解説がテレビで学べると、日本国民の科学リテラシーは格段に上昇すると思われます。