『声に出して読みたい日本語』(著)斎藤孝    2001年  草思社 | 生涯学生気分

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後期高齢者ですが「生涯学生気分」の境地で若々しく、知的な記事を発信して行きたいと思っています。

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「てまえ持ちいだしたるは、四六のがまだ」「生麦生米生卵」。目次を目にするだけでも声に出して読みたくなる口上や早口言葉、古典の名句を集めた暗誦のテキスト。ページをぜいたくに使い、大きめの活字でぱらりと配してある言葉はなじみ深いものが多く、目で追ううちにいつしか口に出している。    こうした言葉は「日本語の宝石」、暗誦することによってその宝石を「身体に埋め込む」ことができると著者は言う。声に出し、身体で美しい日本語を覚えれば、意味はわからずとも潜在的な日本語の力を身につけることができる。 「腹から声を出す」「リズム・テンポに乗る」などのグループごとに選ばれた宝石たちは全部で76。「祇園精舎の鐘の声」(『平家物語』)といった古典の名句のほか「どっどど どどうど どどうど どどう」(『風の又三郎』)「はっきよい、のこったのこった」(行司のかけ声)など楽しいものがたくさん収録されている。  
各文には作品が書かれた背景、声に出すときのポイントなどを丁寧に書いた解説がついている。著者自身の体験や、「兼好法師は『上達論おやじ』である」といった独自の言いまわしがまたおもしろい。気に入った言葉を覚え、ひとり朗々と暗誦したり、親子で声をあわせるのもいい。漢字にはふりがながふってあるから、子どもひとりで暗誦することができる。    読む、のではなく著者が言うように「使い切る」ことによって本領を発揮する良質の日本語テキストだ。(門倉紫麻) 
私の友人に中学・高校時代に覚えた英単語はすっかり忘れたが、島崎藤村の「まだあげ初めし前髪の」や「三人吉三」、「弁天小僧」等の歌舞伎の名セリフ、国定忠治の山下り別れのセリフ、落語の「寿限無」はもちろん、「般若心経」とすらすら暗誦できる奇特な人間がいるんですが、いつも感心するんですが一語一句も間違いがない。たぶん認知症になっても昔覚えたものは忘れないでしょうね。

 

実は私も中学生の時に「もしもしカメよカメさんよ、世界の中でお前ほど」の童謡を「しもしもメカよ、メカんさよ、いかせのちうでえまをほど、みゆあのいろののもはいな」なんてひっくり返して歌っていたらいつの間にか覚えちゃって、今でもすらすら出て来るんですね。
そして思春期に人並みに詩集を齧った時は、史記(刺客列伝)の荊軻の「風は瀟々として易水寒し、壮士ひとたび去ってまた還らず」のかっこよさに酔い、安西冬衛の「てふてふが1匹 韃靼海峡を渡って行った」 とか津村信夫の「指呼すれば、国境はひとすじの白い流れ。高原を走る夏季列車の中で、貴女は小さな扇をひらいた。」とかを気に入り口ずさみましたが、友人のように長い文句を暗誦はしませんでしたね。

 

 

この本も出版されて10年になるんですね。亡き父親と同姓同名の著者なので名前は頭にインプットしてをりベストセラーになったのも承知していたのですが、読んでいなかった。
門倉紫麻さんの解説のように楽しくも啓発される良書で懐かしさもあり、一家に一冊置いておきたい本でした。まだ読んでいない方には是非一読をお勧めいたします! 

 

 

(追伸)著者も時折り口ずさむという佐藤春夫の次の詩を特記しておきます!
『海べの戀』
こぼれ松葉をかきあつめ
をとめのごとき君なりき、
こぼれ松葉に火をはなち
わらべのごときわれなりき。

 

 

わらべとをとめよりそひぬ
ただたまゆらの火をかこみ、
うれしくふたり手をとりぬ
かひなきことをただ夢み。

 

 

入日のなかに立つけぶり
ありやなしやとただほのか、
海べの戀のはかなさは
こぼれ松葉の火なりけむ。