堪能しました!「虚子没後五十年記念、子規から虚子へ~近代俳句の夜明け」 | 生涯学生気分

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後期高齢者ですが「生涯学生気分」の境地で若々しく、知的な記事を発信して行きたいと思っています。

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神奈川近代文学館で開催中の「虚子没後五十年記念、子規から虚子へ~近代俳句の夜明け~」に行って来ました。

 高浜虚子没後50年を機に、近代俳句黎明期から大正初期の虚子俳壇復帰までにスポットを当て、正岡子規はいかに俳句革新を成し遂げ、子規に学んだ虚子は子規没後の俳壇をどう継承し、どう独自に発展させたのか。虚子の前半生に多大な影響を与えた正岡子規・夏目漱石・河東碧梧桐との交流をまじえつつ、新派の台頭により刻々と変貌を遂げた明治俳壇における虚子奮闘の軌跡を、虚子記念文学館所蔵資料を中心に展観したものです。(詳しくはhttp://www.kanabun.or.jp/te0519.html)。

資料が沢山あり展示も行き届いており、俳句愛好者は必見という感じです。平日であったためか参観者は以外に少なかったですね。因みに65歳以上は無料です。
私は俳句初心者ですから、お宝資料があっても十分な説明はできませんが、印象に残ったところをかいつまんで紹介しましょう。

○子規「仰臥漫録」に感極まれり
子規晩年の日記「仰臥漫録」の写が2冊ファイル閉じしてあって、自由に手にとって閲覧できるんですね。私も殊勝な気持ちになってところどころ見てみました。以前読んだ坪内稔典氏の本で子規が菓子パン好きで大食いで三食のメニューも書いてあることや糸瓜の絵などを写生していたのを知っていましたのでこの目で確認した次第ですね。
アップしてある三枚目の写真は九月八日晴れ午後三時頃曇、暫くしてまた晴れ。
朝  粥三ワン、佃煮、梅干、牛乳五勺ココア入り 菓子パン数個
昼  粥三ワン、松魚サシミ、フジ豆、ツクダニ、梅干、梨一ッ
夕  牛乳五勺ココア入り、菓子パン数個
わざわざアン入りと朱記、微笑ましいですね。実は私もこの半年ココアに凝っています。リーズナブルな森永の調整ココアですが。
勿論食べ物の記述だけではありません。脊椎カリエスでの身体の痛みの描写は痛々しい限りです。
4枚目の写真は「仰臥漫録」に載っている子規手書きの絵の一覧ですが、俳味のある味わいの深いものでした。


○子規と虚子の交流の資料の数々
子規と虚子の交流の筆跡鮮やかな書信の展示も豊富で、最初の子規による虚子宛の巻紙の手紙、虚子命名の書簡。子規が驚愕したという「飯が食へぬ」という虚子の書簡。子規が虚子宛に送った笹の葉に朱書きした心葉等。丁寧な解説付きで展示されています。子規や虚子に限らず達筆な字で昔の人は手紙を書いたんですね。ともかくもこれらの資料は俳句フアン垂涎の資料でしょうね。

○対照的な虚子と碧悟桐の書体
俳句入りの掛け軸とか色紙も子規、虚子に限らず漱石のもあり、盛だくさんです。
虚子の「春風や闘志抱きて丘に立つ」の書体は伸びやかで実に優雅ですね。対照的なのは虚子と競った河東碧悟桐の書体ですね。新傾向俳句の意気込みを示すべく中国六朝風の角張ったゴシック張りのいかついもので印象に残りました。

○虚子の肉声に感激
この特別展の前に常設展示が二つあるんですが、どこかの爺さんが句を読んでいるのかと思ったら、昭和22年6月16日にキングレコードスタジオで録音した虚子直々の自句56句の朗読が流されていたんですね。まさか虚子の肉声が聞けるとは光栄でした。
 また、虚子が生前愛用した旅行鞄や帽子、机等の遺品も陳列されていました。

○常設展の漱石
実はこの近代文学館、夏目漱石の資料が豊富なんですね。ロンドンからの帰朝後の東大講師としての最初の分厚い講義テキスト『文学論』、『吾輩は猫である』や『坊っちゃん』の原稿、子規や虚子との書簡、机や筆記具の遺品、漱石の南画等展示されています。

俳句愛好者の方、桜の季節です。みなとみらいのホテルに宿泊して、夜景を愉しみ、中華街で舌鼓し、山手の丘で桜と洋館を愉しみ、この子規から虚子の特別展をご覧になってください。余裕があったら純日本庭園の三渓園にもお出かけ下さい。