第1032章 ☆3方向から3本の矢☆ | yamaoka.seigetsuの孤独なHEART

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日々の出来事。

 想ったこと。

    拙書の紹介。                      
 

 『どん底に沈みこんでも根のある人は、どんなところからでも、どんな困難な状態からでも這い上がることが出来る』
       


 先日の土曜日の出来事である。


 何時もの様にモノレールに乗り、千○中○駅で降りた。

 
 近くで、『朝起きたら、きみがいた。朝起きたら、き・み・が・い・た』と叫んでいる女性がいた。

 何だろう? とよく聞くと、一斤ごとの作りたての高級パンの出張販売であった。

 近くに店を構えているらしい。

 とても良い香りが駅構内に漂っている。

 想わず買いたくなるほどに。 
 
 でもひとりじゃ食べきれない、美味しさを失くして腐らせてしまうのがオチだ、と諦めて、ピタパを出しながら改札に向かった。

 すると、私の瞳に今までとは違う異様な光景が飛び込んできた。 
 
 閑散としている駅の出入口である。

 何時もは老若男女の人たちで賑わっている筈なのに。

 しかも土曜日だ。

 どういうことなのか?と、ピタパを改札機にかざそうとすると、また瞳に飛び込んでくるものがあった。

 ひとつではなく、みっつ。

 いや、正確には3人。

 何かの重要参考人を瞳で探しているが如き警察官がいたのである。

 しかも、改札を出る私に視線という3本の矢を向けている。

 そして其れは、真っ直ぐに私のほうへ飛んできて、真ん中の的に突き刺さった。

 何か悪いことでもしたのか?

 いや、思い当たらない。

 するわけがない。

 其のとき、ひとつの或る記憶が蘇ってきた。

 かなり前、深夜に自転車の鍵を失くして、鍵式のワイヤーロックを切断しなければいけないことがあった。

 申し訳ないことに深夜に知り合いを起こして、金鋸とニッパーを持ってきて貰って。

 そんなことがあってから、新しく買ったのがダイヤル式ワイヤーロック。

 あの番号を合わせて解錠するものだ。

 此れなら鍵を失くす心配がない。

 早速購入して使用開始。
 
 だが、不便なこともあった。

 辺りが暗いと番号が見にくい。

 たまたまいっしょに駐輪場へ来た馬蹄錠や鍵式のワイヤーロックの人は鍵を解錠して駐輪場をあとにする。
 
 当たり前のことだ(でも失くすと怖い)。

 番号が光れば使いやすいのだけど。(誰か発明してくれないかな。あっ、番号部分に夜光塗料を塗れば良いのか。其れとも、もうあるのかも)
 
 でも、とりあえず使い続けることにした。

 で、自転車に乗るときは、ハンドルに掛けておいた。

 暗闇では解錠に時間がかかるものの、調子よくいく日が何ヶ月か続いた。

 でも、人生上手くはいかない様に出来ている。

 自転車を止めて用事を済ませ、スタンドを上げ、サッとサドルに腰を下ろした瞬間だ。

 後ろからみっつ、いや、3人の視線と人影が近づいて来た。

 先刻と同じ、何かの重要参考人を探しているが如き視線たち。

 現在出会った様な警察官たちである。

 「ちょっと降りて下さい」

 私は何事かと振り向いたあと、素直に自転車を降りた。

 「鍵、付いていませんね」
 
 男性警察官に言われた。

 「いや、此処に」

 私は、ハンドル辺りに掛けていたダイヤル式ワイヤーロックを指差した。

 「あのガチャリンてする」

 じゃなくて、と言いたそうに、女性警察官がサドルの下辺りを指差しながら言った。

 私は馬蹄錠のことを言っているんだなと想った。

 「ああ、はい。以前鍵をなくしたことがあってダイヤル式のワイヤーロックにしたんです」

 私は言った。

 「ああ、なるほど、鍵、失くさないですものね」

 女性警察官は言った。

 だが、すぐに男性警察官が、防犯登録照会して良いですか?

 と訊いてきた。

 どうやら警察官たちは馬蹄錠が付いていないことから盗まれた自転車? と思ったらしい。

 私は勿論頷いた。

 数分後、盗難車ではないことが解った。

 私は急いでサドルにまたがった。

 仕事に遅れる。

 そう思いながら。

 ベダルを漕ぎ出すと、大きな声で、有難う御座いました! と聞こえた。

 でも、済みませんでした! の済(す)の字も何処にも見当たらなかった。

 其の上、凄く恥ずかしかった。

 まあいい、急ごう。

 というのが、蘇ってきた記憶である。

 話を現在に戻して、私は改札前のセブンイレブンに入った。

 パンとシーチキンおにぎり等を購入し、セブンイレブンを出た。

 するとまた、先刻の3本の矢が3方向から飛んできて私にまともに刺さった。
 
 痛い!と声に出そうな痛さであった。

 でも仕事に向かう為、矢が突き刺さったまま私は近くのビルに入った。


 真的に異様な光景であった。


 では、今宵も、孤独なHEARTを抱きしめて・・・