百田尚樹氏の日本国記は物語の日本史である。大衆作家としての資料や豊富な人脈を活用をしての作品である。坂口安吾は、日本文化私観で歴史を論じている。優れた内容である。鋭い分析である。百田氏の史実の寄せ集めではない。坂口の真摯な歴史論である。
歴史学でいえば、学生時代に徳富蘇峰の近世日本国民史を読んだ。徳富蘇峰は人生を賭けた本である。文庫本に赤線を引いて心から感動もした。渡部昇一先生も絶賛されていた。あの頃は、時事通信社に長谷川才次社長の力も大きかったと思う。
皇国史観の平泉澄は、ドイツ留学をした博学の学者であるが、東大教授に就いて、保守の東大生に朱光会という組織を作り皇国史観を東大生に浸透させた。敗戦では平泉はパージをされたが、戦後、文科章で教科書検定官として家永三郎の左翼教科書と対立をした村尾次郎氏は愛弟子である。
現代では、実証主義で明治・大正・昭和史を研究をした。伊藤隆東大名誉教授、鳥海靖東大名誉教授が健在である。保守派の学者・知識人は、亀井勝一郎の昭和史論争、竹山道雄の昭和の精神史は必読である。日本国記が世代を超えて読まれる本になることを期待をしたい。
AD