『ヤクザの子』石井光太(新潮文庫)


カバーの裏の作品紹介に、暴力団の家庭に育った子供たちは、DV、ドラッグ、差別、貧困などにさらされ、学校では孤立し、社会では出自が影響して就職も難しい、ヤクザの血を引く人間は表の世界で生きられないのか? とありました。


本書には、ヤクザの子として生まれた14人の子供たちの生い立ちとその後の人生が描かれています。暴力団排除の今の社会で、本当に傷ついているのは子供たちだ、という思いで一人ひとりに向き合った、著者の熱意とエールを感じる一冊です。






両親も夫も麻薬の密売人、暴力から逃れるために小学生で街を徘徊、不登校から暴走族、ホステスを経験し、夫の逮捕から保健師に救われて社会復帰への道を見つけた女性。


ジャンキーの母に捨てられて義理の母から虐待を受けて家出、覚醒剤の売人になって日銭を稼ぎヤクザの子供を何人も産みながら、逮捕、服役を繰り返し、母子支援施設で生活保護をもらって暮らしている女性。


その娘で、母親もヤクザの父親も逮捕されてばかりなので養護施設で暮らしてたけれど、母親が子育てで大変だと聞いて施設を出て同居、弟妹の面倒を見ながら高校と建設のバイトを頑張っている少女。


指定暴力団の子として育ち、自分は絶対にヤクザを継がないと決意しながら、親の影響から逃れることはできず、右翼、短大、暴力団を渡り歩いたのち、建設会社を立ち上げて各地の現場を飛び回っている男性。






暴対法の目的は暴力団の活動を制限して壊滅を図ることですが、制限されたからといって彼らや家族が一般社会に受け入れてもらえるわけがなく、貧しさから覚醒剤の売人になり自らも中毒患者となるケースも多いのです。救いとなるのは、やはり一般社会で生きている人間の善意。保健師や福祉士はもちろん、スナックのママや底辺の仕事で生きる身内、ネットで知り合った寛大な家族。出会いを通してヤクザの子たちは人を信じる心を取り戻すのです。


可哀想な子供を撲滅するのではなく、彼らの存在を知り、否定せずに受け入れることが、カタギの人間にできるせめてもの『支援』なのかもしれません。