愛染恭介のやぶからぼう日記 -28ページ目

畜生のあいさつをもって

昨夜久しぶりにもんじゃ焼き屋に入った。
店内は恋人たちと家族で溢れかえっていた。年末らしい光景だ。
こどもたちはもんじゃやお好み焼きが大好きだ。お母さんは一時家事から離れ、
お父さんが腕を振るう。こんな風景は以前なら、なんとも思わない、ことしから
目が離せなくなった。頼むから、この家族を守って欲しい、壊さないでほしい、
いや、壊してしまえ、え?今なんて言った?
私には時折悪魔が囁く。私と犯罪者の垣根はなんだろう?理不尽な行為に及ぶ
犯罪を、事故を、「理不尽」のひとことで片付けられない、その過程を思わずにはいられない。
ニュースは断片的な事象しか伝えられないけれど、そこに至るまでの膨大な「過程」をひも解いて
いくと、そのニュースは、犯罪者は、波のように私の足元に寄せてくる。
犯罪を犯すものと犯さずに至ったもの、原発にさよならを言いたい人と必要を訴える人、
無口な人と多弁な人、その垣根はなんだろう。
外で飲んでいると、「おとなしく飲んでいたね」といわれることがあるけれど、
酒そのものより、宙に舞うそこにいる人皆の声に出てくる言葉、出てこない言葉を
拾い集めて、時には上から舞い降りてくる言葉にも耳を傾けて、結構忙しい。
こんなことを言うと狂っていると思われるかもしれないが、
この時代に狂っていない方が狂っているので狂っていると思われるくらいのほうが
なんと順応に生きていることか!
言葉は一人では生まれてこないから、何人もの人と出会って自分の声を発するところから
自分の思考が始まるけれど、言葉を発し始めてから、自分の言葉の平たさに、
多くの人が絶望する。言葉にするまではその過程の中で多くの道筋があったのに、
言葉にしたとたん自分でも思いがけない一本の筋に集約されてしまう。
それは商売するのに計算が必要なように、自分の考えを伝えようとすると
どこか無意識のうちに計算が入ってしまうのではないか。
なんの計算も入れずにしゃべったら支離滅裂でただの酔っ払いと思われてしまう。
でも、口にするまでは答えになる以前の多くの伏線が迷路になって広がっている。
スポイトで絞りきる思考以前の海を描こうとして、音楽や絵という表現があるのじゃないかしらん。
私は目の前の家族を見て思う。
その風景が永遠に続きますように。
わたしはある一点を見ないようにしながら、その一点に神経を注ぎ込み、
無駄に言葉や音楽を発していこうと思う、来年も。
多くはスルーされても、たまに一人の人ががっしりと受け止めてくれる。
それだけで生きていてよかったとさえ思う。
人々はなにかとリセットしたがっている。一年というのは調度リセットするのに
都合のいいシステムだ。私も年末になってリセットしたいと思っている。
でも出来ない。わたしはある一点に神経を集中させていることに変わりはない。
来年になれば震災や原発事故がリセットできるのか。
野田政権が支持から、簡単に不支持に廻ったひとたちは「リセット」したのか。
元々そんなに期待できない政策状況の中で、「支持」からこの短期間に「不支持」に廻った
人々の思考こそ、支持できない。世の中の「断片」だけを広い集めていたら
やがて終わりが来る。
あらゆる事象の「過程」にこそ、終わらせない、ヒントがあるはず。
わたしは家族の団欒をうれしく見ながら、わたしは優しいので悪魔の囁きにも
耳を傾ける。そいつを払いのけながら、わたしは呟く、お前はオレになにを伝えたいのだ?
世の中は理不尽だ?
そんなものはクソッ喰らえだ!!
本当のグリム童話にしても日本昔話にしても、説教しているのではなく、
理不尽さだけを伝えようとしている。それは子供にとってとても大事なことのように思われる。
そいつをえさに、「畜生!」ってことばが生まれてくる。
わたしには、聞こえるよ、あの「一本松」が「畜生!」ってただひとり立っているのを。

来年こそみなさまにとって良き年でありますよう!

太陽の新生、あけて。

愛染恭介のやぶからぼう日記

在日フィリピンのともだち、
俳優にして、シンガーのアリソンのレコーディング風景。
なんてスカジャンが似合うんでしょう。
ギターでサポートしました。22日。

あけて
クリスマスイブはベルク史上最も忙しい一日となりました。
いろいろあった今年ですが、
震災後にこれだけのお客さんに来て頂けたのには感慨ひとしお。
震災直後店を開けられなかった日々が蘇ります。
被災地ではまだそれが続いていますね。
ベルクのお客さんは気前がいいので、
いまだにつり銭をガッツリ募金箱に入れてくれる方が多いです。
この勢いを有効に使ってくれそうなところに
送らせて頂いておりますが、来年も引き続き。
報告は毎度ベルク通信にて。
太陽の新生を祝って。クリスマスともいう。

Still Crazy After All These Years

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過去をふりかえりなさんな!とは言いたいけれど、
昨日だけは過ぎ去った日々、諸々万感の思いの夜。
まずは、身近に知りうるギタリストの中でもっともセクシーでスリリングな
プレイヤー「ケンちゃん」の追悼ライブの昨日。
場所は、年内で閉まるクラブドクター。
この場所は、私がソロライブをやることに背中を押してくれたハコ。
10年間、ほんとお世話になりました。
ライブは友だちの「灰色」ことMくんのサポート。
Mくんは仙台出身で、地元の古古古米が余ってるからとい~~ぱい古古古米を分けてくれたり、
とってもいい奴。でももう帰郷してしまう。
だからこそ、今回はサポートさせて欲しかったんだな。
そして、私にとってはドクターとセットになっている、
打ち上げ場所の「たんたん亭」。ここでは来てくれたいろんな人と
いろんな話をしたな。ライブを肴に、音楽の話、打ち明け話、打ち上げ花火・・・
でも、ここもドクターとセットではないけれど、
この辺りの開発の波に追いやられて、近々閉店の模様。
もう、この場所には用がなくなってしまうや。
近所にあったお地蔵さんが新しい幹線道路のど真中に追いやられてから、この一体は・・・
新宿の庶民の景色に幕を下ろし始めていました。
いまはポール・サイモンのStill Crazy After All These Yearsを口ずさみたい気分なのであります。
デビッド・サンボーンのサックスソロを脳内に轟かせながら。

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