オウムにおけるサリンの製造方法は一つではない。
大別すれば3種類だが、土谷はもっと他の方法も試している。
ポイントは酸の発生をどうやって中和するのかだが、これにはいくつかのやり方がある。
白いサリン、青いサリン、茶色いサリン、それぞれに違っている。
中川が面白い事を言っているなと思うのは、トリエチルアミンを使っても上手くいかなかったという話だ。
土谷と一緒にソフトを使ってみた結果、上手くいきそうだという結論になったのだが、なぜかダメだった。
結局、ジエチルアニリンに落ち着く事となった。
ま、ワシは化学の専門家ではないので、あくまでも推測になるのだが、これはダメだろう。
トリエチルアミンは塩基性だから、酢酸やクエン酸には効果がありそうだが、相手が塩酸では歯が立たない。
化学式を見た限りでは、ジエチルアニリンが効果を発揮するのはアニリンの部分であって、エチルの部分ではない。
したがって、エチルしかないトリエチルアミンでは役に立たない。
そう見える。
こと化学に関しては土谷と中川ほど優秀な人間はオウムにはいなかったと思うのだが、なぜそんな勘違いをしてしまったのか不思議だ。