数はゆっくり数える。
100数える間に2分経っているぐらいで構わない。
ストップウォッチを使うなど以ての外である。
スイッチを押したりタイムを見るのに、余計な心の働きを使う必要が出てきてしまう。
それらは全てサマディの妨げとなる。
上体を前に倒し、目を瞑り、ただ数を数えることだけにぼんやりと意識を向ける。
努力が足りなければ結果は出ない。
しかも、それが正しい努力でなければ、どんなに努力しても害にしかならない。
時間の経過と共に、変化はより大きくなっていく。
バンダが緩んでいる間のドクドクドクは1秒間に数回、バンダで締め付けている間はドック~ン、ドック~ンと数秒間に1回となる。
クンバカの限界突破時の秒数の伸び方も、1回あたり10秒、20秒、30秒と急激に長くなっていく。
まるで、漸近的に無限の時間のクンバカ、つまり死に向かって行っているように思える。
恐怖はない。
だからといって、これと言った高揚感があるわけでもない。
ただ淡々と、決められたことを繰り返すだけだ。
修行者という生き物は究極のエゴイストである。
誰かを目指したり、誰かに憧れたり、誰かを慕ったり、そんな感情を生まれつき持っていない。
目指すのは自己の完成のみ。
他人の事になど、興味はないのだ。