最初に感じるのは自分の心臓の拍動である。
誰でもそうだと思うが、普段の生活では自分の心臓の動きを感じる事は無い。
心臓が動いているのやら動いていないのやら、全く意識もしていないにも関わらず、心臓は誰にも感謝されないまま全力で生命の維持に努めてくれている。
なんて有り難いんだ!
なのだが。
心臓が動いている。
それは同時に、サマディに入ることを妨げている障害でもあるのだ。
それぞれの動作に合間合間に、どくっ、どくっ、どくと心臓の動きを感じる。
が、しかし、これはとても不思議なことである。
例えば、激しい運動をすると呼吸が乱れる。
激しく脈を打つ。
しかし、身体のどこにも触れることなく、心臓の動きを感じる事は出来ない。
また、心筋梗塞においても、感じるのは胸が苦しい、締め付けられるように痛い、というものである。
心臓の動きそのものは知覚出来ない。
それは、人間の身体がそのように出来ているからなのだろうと思う。
修行者だけが、激しい修行によって、自分の心臓の動きを手に取るように知覚することになるのだ。