人語を発するのは、何も鳥だけに限ったことではない。
ネコもまた、そうなのである。
ある雨の日に、街中を傘をさして歩いていると、どこからともなくか細いネコの鳴き声が聞こえてきた。
「うみゃ~、ふみゃ~、」と随分と情けない。
どこで鳴いているんだろうなあ、とあたりを見回してみると、建物と建物間の細い隙間から、仔猫が身を乗り出して鳴いていた。
こんな冷たい雨の中可哀想になあ、と思いながら近づいて傘をさしかけようとしたところ、仔猫ちゃんはビクッと体をこわばらせて後ずさりをしながら、こう言い放ったのだった。
「あんたじゃないのーーーー!」
そうですか。
およびじゃないですか。
ま、そういうことなら仕方あるまい。
では、ごきげんよう。
てな、わけだ。