チームジャパンはすぐに動いた。
東大研究室がアルファ碁の論文を解析し、どのような手法を使っているのかを、かつて世界大会で初出場初優勝を果たした天才プログラマー尾島に伝える。
ドワンゴから提供されたサーバーを使って、加藤が並列処理のプログラムとGPUを担当した。
アルファ碁はヨーロッパチャンピオンと戦う前に、三千万局を研究した。
1局で300手として、高性能のGPUでもすべて終了するのに1年かかる。
そこでグーグルは、1台10数万するGPUを50台使って、わずか1週間で解析を終えた。
その結果、アルファ碁は史上最強のマシンとなったのである。
チームジャパンには、グーグルほどの資金もなければ人員もいない。
そこで東大研究室は、グーグルとは違う手法を開発し、その手法を使ってZenにディープラーニングをさせた。
3月から始まった機械学習は、最初は何の効果もないように見えた。
2か月たっても、3か月たっても、Zenはほとんど強くなっていなかったのだ。
ところがである。
開始から半年ほどが過ぎた9月、Zenは一気に強くなった。
それまで2400ほどだったレイティングが、1か月足らずで3000を超えたのである。
レイティング3000とは、アルファ碁がヨーロッパチャンピオンを倒した時と、同等の強さである。