そう言えば、最近不審者の目撃情報があったことを思い出した。
ここでいう不審者とは、要するに一般人ということなのだが。(笑)
オウム真理教富士山総本部道場のあたりにいるのは、小汚い格好をしたサマナか、または近所に住む農業や酪農を営む田舎のおっちゃんやおばちゃんである。
しかも、教団施設の外側は恐ろしく人口密度が低く、人の姿を見かけることがほとんどない。
そんな状況の中に一般人が紛れ込むと、とても目立つのである。
しかも、その一般人は道場の方を見て、様子をうかがっていたというのだ。
これは怪しい。
田舎のおっちゃんやおばちゃんは、オウムの事など気にも留めていないのだから。
だからといって、この情報がまさか強制捜査に結びつくとは、誰も思ってはいなかったのだが。
そうやって、完全に調べは付いていたのだろう。
機動隊の動きは素早く、あっというまにサティアンのドアは破壊され、開けられてしまった。
しかし、この時、オウム敷地内にまでは入る事が出来なかった機動隊には、わずかに誤算があったのだ。
ドアが開け放たれた瞬間、
「ワアーーーー!」
「オオーーーー!」
という、悲鳴とも歓声ともつかない声が上がった。
もちろん、そんな事で怯むような機動隊ではない。
目の前にいるサマナを引きずり出し、地面に叩きつける。
まさしく排除だ。
叫び声をあげながら、無抵抗のまま次々に放り出されるサマナたち。
これぞ、非暴力の実践!(笑)
誰も、何の抵抗もしない。
なすすべもなく、しばらく見ているしかなかったが、ここであれっ?と思った。
サマナたちは次々に外へ出されているのに、機動隊は一歩も動かずに中に入れていない。
どういうことなんだろうと思ったが、その答えはすぐに出た。
おそらく、サティアンの玄関ホールには、サマナ全員が集められているのだろう。
これは本来ならばあり得ない事だった。
サティアンは通常、サマナの出入りは禁止である。
それが今は解除されているのだろう。
が、しかし、このままサマナたちが排除され続ければ、いずれ時間の問題で機動隊に突入されてしまう。