モノトーンのツートンカラーの乗用車。
その乗用車がパトカーだと気づくまで、ほんの一瞬タイムラグがあった。
こんなところをパトカーが走っているわけがない。
そんな思い込みがあったのかもしれない。
そのパトカーはサイレンを鳴らすわけでもなく、何の音もたてずに静かに滑り込んできた。
その後ろに、今度は普通の乗用車。
それに続くのが、大きな車。
これもパトカーと同様に二色刷り。
暗い水色と白のストライプだった。
こんな静かな田舎町には不釣り合いな大型バス。
窓には金網が張られ、カーテンがすべて引かれている。
機動隊輸送車!!!
そして、最後尾からはもう一台のパトカーが続く。
目の前を最初のパトカーが通過してから、最後尾のパトカーが通過するまで、ほんの3秒かそこらだった。
4台の車は音を立てることもなく、その気配を感じさせることもなく、文字通り瞬く間に目の前を通り過ぎ、ノーブレーキのまま雑貨屋の裏の駐車場へと消えていった。
4台の車は雑貨屋の陰に入り、こちらからは何も見えない。
ほんの数秒の間に起った事がまるで嘘のように、いつもの静かな日常の風景に戻っていた。
来た。
本当に来た。
強制捜査があることなど分かるはずがない。
そう思っていた。
しかし、本当に警察はやって来た。
どうやって強制捜査があることを知る事が出来たのか?
それは謎だが、今はそんな事を考えている暇などなかった。