熊本県警強制捜査④ | 法友(とも)へ

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Mとふたりで監視小屋の前に立つ。


静かだ。



人通りはない。


時折、目の前の道路を車が通りすぎる。


そのほとんどは上九方面へと向かうものであり、富士宮方面へと向かうものは少ない。



遠くから車のエンジン音が聞こえてきて、目の前をタイヤが地面をこする音、車体が風を切る音が通り過ぎていく。


音がするたびに、音の方向へと目をやる。


特に何も問題はない。


車はただ、通り過ぎていくだけだ。


朝の冷え込みから解放されて、Nは椅子に座ったまま温かい監視小屋の中で、うつらうつらと舟を漕いでいた。



今日は強制捜査の日。


そんな事を忘れかけていた、その時。


目の前を、富士宮から上九方面へ向けて、何かが通り抜けていった。



最初に視界に飛び込んできたのは、白と黒の乗用車、そんな風に見えた。


しかし、不思議だった。


音がしなかったのだ。


車が発するエンジン音、タイヤが地面をこする音、車体が風を切る音。


何も聞こえなかった。



その車は音を立てずに、滑るようにしてやって来た。


目の前を通り過ぎるまで、誰もその事に気づくことが出来なかったのだ。