シャクティーパットはエネルギー的にだけではなく、肉体的にもハードである。
なので、麻原だけでなく弟子たちもみんな倒れる。
ケイマも、アングリマーラも、シャンティーも、みんな倒れた。
あまりにハードであるために、アングリマーラとシャンティーのシャクティーパットは廃止。
ケイマのシャクティーパットは、入念にその準備のための修行をしてから再開ということになった。
要するに、マハームドラーの成就の後に行う、ということである。
そしてケイマは、何度も倒れながらシャクティーパットを続け、なんとかその課題をクリアした。
問題が起こったのはその後、ヤソーダラーのシャクティーパットにおいてである。
ヤソーダラーもケイマと同じく倒れた。
麻原からは続けるようにと言われたのだが、いやだいやだと逃げ回った。
そしてついに、自分の部屋に鍵をかけて閉じこもったのである。
外に出てくる様子は全く見られない。
名古屋支部では信徒たちが待っている。
刻々と時間がせまってくる。
平日なので信徒たちは会社を休んで支部にやって来ている。
60時間の支部道場の修行をこなし、10万近いお布施をし、会社を休んでまでやって来るというのに、ヤソーダラーは自分が苦しい事を理由にシャクティーパットは嫌だと拒否したのである。
大乗の救済者失格である。
全く、同じ麻原の弟子として、恥ずかしい。
自己の苦しみを喜びとし、他の苦しみを自己の苦しみとするのではなかったのか!
情けないとしか、言いようがない。
そういうことになってしまったので、仕方なく麻原がヤソーダラーの代わりにシャクティーパットを行ったのである。
前代未聞の出来事であった。
後にも先にも、こんなことはこのただの一度きり。
だが、この事はサマナの間ではあまり知られていない。
なぜなら、それは完全なる恥さらしであり、サマナたちの教団への信を失わせる行為であるからである。
逆に、信徒でも名古屋支部に出入りしていれば、その事を知る事が出来た。
それにしても、全くのとんだお騒がせだ。
信徒のカルマを受けて具合が悪くなるからと文句をつける、そんな成就者になど誰がなりたいものか!