サリンの合成は有機溶媒の中で行われた。
溶媒とは何かというと、要するに液体の事である。
最も身近な溶媒は水という事になるが、様々な物質は水に溶けやすい。
水に溶けるとはどういうことかと言うと、要するに分解されるという事であり、サリンもまた水に触れると分解されていく。
なので、サリンは水の中で合成するわけにはいかず、水以外の液体を使う必要がある。
有機溶媒とは、有機物の溶媒の事である。
有機物とは、炭素を骨格として、そこに水素がくっついた物質の事である。
酸素は含んでおらず、サリンが分解されてしまう心配はない。
高校の化学の実験で使用される有機溶媒はヘキサンである。
そして、オウムがサリンの合成に用いた有機溶媒もまたヘキサンである。
ヘキサンとは何かというと、要するにベンジンの事である。
何度も書いて申し訳ないが、サリンの合成は高校の化学のレベルで十分すぎるのだ。
日本の教育レベルの高さには驚かされるが、サリンの合成に必要な能力を持つものは、日本国内だけでも数千万人もいるということになる。
現在では、サリンの製造方法を誰でも簡単に入手出来る上に、平均的な日本人ならその作業をこなせる能力を持っている。
にもかかわらず、オウム事件以降20年以上もの間、同様の事件が一度も起きていないのは原料の監視体制が行き届いているという事なのだろうと思う。