サリンの合成は三ツ口フラスコで行われた。
高校の化学の実験と同じく、手作業で行われている。
三ツ口である必要というのは、例えば合成の最終段階を見てみれば分かる。
主原料であるメチルホスホン酸ジフルオリドでひとつ。
滴下するイソプロピルアルコールでふたつ。
反応により発生する酸を中和するための、ジエチルアニリンでみっつ。
ということになる。
大変危険な作業ではあるが、作業自体は高校の化学のレベル程度に過ぎない。
サリンの製造が難しく見えるのは、全部で5段階の作業が必要であり、そのすべてを知っていなければ完成しないというところにある。
詰め将棋に例えるなら、15手詰めを頭の中だけで解く様なものだと言える。
これを3手詰めの詰将棋5個に分解すれば、恐ろしく簡単な問題となる。
しかも、解答図を見てもよし、盤駒を動かしてもよしなのだ。
この条件なら小学生にでも出来そうだ。
続いて、その作業の難易度だが、イソプロピルアルコールの滴下とか、ジエチルアニリンで酸の中和とかですぐに思い出すと思うが、小学校の実験レベルである。
塩酸に少しずつ水酸化ナトリウムの水溶液を加えていき、リトマス試験紙でペーハー(笑)を測る。
中性になったら水分を蒸発させると塩が取り出せる。
5段階あるそれぞれの工程のひとつひとつは、日本の義務教育レベルから見て特に難しいものではない。