カマキリの器用な前足の動きに対して、「祈りをささげるカマキリ」という表現もある。
この不思議な動きは、緑色の大型のカマキリではなく、やや小型の灰色のカマキリに見られる。
ある時、カマキリを見かけたので、そっと近づいてみた。
すると、そのカマキリは前足をそろえて前に伸ばした。
カマキリの前足は、普段はカマの部分まで折りたたまれて、がっちりガードを固めたような体勢になっている。
それは、アシナガバチが前足をだらりと下げた、ノーガード戦法の様になっているのと対照的である。
本来はそうやって折りたたんでいるはずなのだが、この時そのカマキリはなぜだか前足を真っ直ぐに伸ばしたのだ。
カマの部分まで真っ直ぐ。
両腕をそろえて、腕の間に頭を入れているので、祈りを捧げるというよりは立位礼拝。(笑)
立位礼拝というよりは、身体を地面に投げ出す五体投地に近い。
カマキリは身体を低くして真っ直ぐに伸ばし、そのまま動かない。
一体何をやっているんだろうなあ?
と思ったのだが、すぐにその意味が分かった。
そこで、そ~っと物陰に隠れてみると、カマキリは上体を起こして前足を折りたたみ、いつものスタイルに戻る。
今度は逆にカマキリに近づいていくと、また真っ直ぐに伸びる。
僕が隠れるとカマキリが縮む、僕が近づくとカマキリが伸びる。
隠れると縮む。
近づくと伸びる。
何度やっても同じである。
これは要するに、いわゆる擬態である。
身の危険を感じたために、木の枝に見せかけようとしているということだ。
バレバレなんですけどね。(笑)
まあ、あんまりストレスを与えるのも可哀想なので、その場を離れることにした。