事務からサティアンの鍵を持ち出して、廊下を歩いていく。
道場側からサティアン1階の入り口へ出る。
男数人でやいのやいのと言いながら、パイプシャフト室から自分の好みの武器を選んだ。
「何をやっても構わん。」
麻原からそう許可が下りている。
オウムには厳しい戒律があり、暴力は殺生のカルマになるので禁止されている。
しかしこの場合は、麻原から許可が下りているので、佐伯をぶちのめす事は功徳となる。
まあ、これがカルトの恐怖というやつなのだろうと思う。
このとき、サマナ数名の胸中は人それぞれだったのだろう。
佐伯に恨みでもあったのか、「殴ってもいいんだよな?」
と言ってやる気まんまんな者もいた。
もちろん、いままでの恨みを晴らそうが、誰も止めはしない。
基本的には、佐伯はその傲慢な態度からサマナたちの嫌われ者だったから、暴力沙汰になったとしても佐伯の味方をするものは誰もいない。
これで臨戦態勢は整ったので、後は佐伯がやって来るのを待つばかりとなった。
僕はと言えば、始めから乗り気がしなかったのだが、これは麻原から命じられたワークなのだから逆らうわけにもいかない。
渋々みんなと一緒に行動することとなった。
恨みを晴らしたいと思っているサマナは、「早く来ないかなあ。」
などと言って、もはや佐伯をぶちのめすのを楽しみにしている様子だった。
冷静な態度のサマナもいるにはいたが、全体としては佐伯を待ち受ける体勢は十分すぎるほど整っていた。