運命の分かれ道⑥ | 法友(とも)へ

法友(とも)へ

ブログの説明を入力します。

富士山総本部道場にいるサマナには、杉並の様子は分からない。


そこで、富士山総本部道場と杉並を行き来している車両班のサマナが、杉並そして佐伯に関する情報を憶測を交えながら色々と話をしていた。


まあ、結局は佐伯が何をやらかしたのかの結論は出るわけがない。


オウムのワークは大抵いつもこんな感じで、何だかよく分からないうちに時間が過ぎていく事が多い。



そうこうする内に佐伯がやって来るのかと思いきや、なかなかやって来ない。


大雑把に話を聞き終わった後は、皆それぞれ思い思いの事をやり始めた。


蓮華座を組んで瞑想する者、マントラを唱える者、ただぼーっと突っ立っている者。


時間の経過も気にせず、佐伯がやって来るのを楽しみにしている者。(笑)



麻原の電話の勢いだと、直ぐにでも佐伯がサティアンを襲う。


そんな感じの慌てぶりだったのだが、実際には何のことはない。


のんびりしたものだ。



30分経っても、1時間経っても、佐伯はやって来ない。


この時、その場にいた全員が、おそらく同じ事を考えていたのだろうと思う。


佐伯はこの後、タイトル剥奪の上に破門になるのだが、そのことはまだサマナには知らされていなかった。


そして、誰かが言った。


「来ないんじゃないの。」



全く同意である。


何があったのか分からないが、とりあえず佐伯がサティアンにやって来る事はない。


僕はそう判断を下し、ワークに戻ることにした。


他のサマナたちも、おいおい戻っていったようだ。


みんなして佐伯の事などそれっきり忘れてしまったのだが、もちろん何の問題もなかった。



ここがおそらく、佐伯にとってもオウムにとっても、運命の分かれ道になったように思う。


杉並から佐伯の実家に向かう途中に、富士山総本部道場がある。


佐伯が立ち寄っても、何もおかしくはない。


だが、佐伯はやって来なかった。



もし、佐伯がサティアンにやって来ていれば、そのまま捕らえられてしまった可能性が高い。


そうなってしまったら、麻原の前に引きずり出されて、その後に恐ろしい事が待ち構えているだろう。


村井や新実、早川たちは、麻原の命令をすばやく実行するだろう。


もちろん僕も、殺人事件に関与してしまうことになるのだが。


今、呑気そうにブログなんか書いていられるのは、佐伯のおかげと言えるのかもしれない。(笑)