27手目、5七銀と引いた手に対して6五銀と出るのが悪手。
ここは7二銀と固めておいて後手十分。
一旦前に出た銀を引かせたことで、若干後手がリードしている局面と言える。
36手目4四角と打って、角交換してからの4七歩成りはもはや支離滅裂。
ここで単に4七歩成りであれば、45手目6四龍の時に、5四金と出て後手が有利な体勢となっている。
しかし、実際には6四龍でもはや大差。
後手にはほとんど勝ち目がない。
斉藤から見れば楽なもので、普通に指しているだけで、時間の問題で勝ちが転がり込んでくる。
Aperyの指し手はとてもコンピュータとは思えない悪手の連続で、電王戦のルールが恐ろしいほどコンピュータに不利である事が分かる。
そう言えば、持ち時間の設定もコンピュータは変えることが出来ない。
人間同士の対局であれば、持ち時間の範囲内であればその都度自由に時間を使うことが出来る。
当たり前すぎるほど、当たり前の話である。
しかし、電王戦ではコンピュータは貸し出した時と同じ時間の使い方で、本番を戦わなければならない。
なぜなら、時間の使い方が変わると、指し手が違ってくるからである。
プロ棋士が対策を立てた、その対策どおりの手を本番で指すことが、コンピュータには求められるのだ。
手かせ足かせ嵌められて、おまけに目隠しまでされているかのようなコンピュータの戦いぶりは、まさに壮絶だといっていい。
54手目2二飛もよくない。
ここは2七角成りから4五馬と引いておけば、まだ勝負はもつれただろう。
それなら、飛車を6筋に回す楽しみも残る。
64手目6六歩も6九飛かなと思う。
3九の金がいなくなれば飛車が成り込める。
二枚飛車を活用されては先手ものんびりとはしていられない。
73手目6二金で寄り。
もはや、どうやっても後手玉には受けがない。
この後の指し手は、余分なものをそぎ落とし勝つために必要なものだけを詰め込んだ、コンピュータならではの水平線効果となった。
今回の対局を振り返ってみて、とにかくAperyの悪手が目立つ。
斉藤は特にいい手を指すわけでもなく、普通にやっていただけである。
こんなに悪い手ばかり指すのであれば、アマチュア名人クラスなら誰でも勝てたのではないだろうか。