サンガはごく普通の古い民家だった。
家の中に案内されて、これまた古いタンスの前に置いてあるちゃぶ台に寄りかかって、のんびり庭を眺めていると高橋 克也がやってきた。
これから行う作業について説明してくれたのだが、物腰の柔らかな好青年だった。
ハンダごてを2本とその台とハンダ、プリント基板にICを持ってきた。
昔懐かしTTLってやつだ。
それを足を曲げないようにしてプリント基板に差し込み、ハンダ付けをする。
向きを間違えないように気をつける必要があるが、作業自体は簡単だ。
ハンダごてが人数分なかったので、高橋 克也に持ってきてくれるように頼むと、「分かりました。」と言って丁寧に対応してくれる。
どこまでも好青年だった。
が、しばらくして戻ってくると、「こっちでも使っているので、余っているのがないんです。」と謝っていた。
正直、スタッフにもこんなまともな人がいるんだと思って驚いたものだ。(笑)
ほどなく作業は終了したのだが、この後が大変だった。
次に高橋 克也が持ってきたのは、配線図と穴あきボード、ICにラッピング線だった。
この手書きの配線図を見ながら、ストリッパーで単線の皮膜をむいてハンダ付けするということなのだが、ここで一気にハードルが上がってしまった。
当時、こういう作業は電子機器の試作の段階ではよくある話なのだが、簡単なハンダ付けしかしたことのない人間にはかなり荷が重い。
ボードにICを差し込み、仮留めしてから配線図を見て、ラッピング線の長さを測って切断し、ストリッパーで皮膜を剥がす。
それから間違えないようにハンダ付けしていくのだが、ラッピング線は全部同じ色であり、何十本もの線が交差しているので恐ろしく時間のかかる作業だった。