アストラル丹とソーマの消費が大いにすすむ中、麻原からお達しが出ることになる。
石井が言うことには「神々がもっとよこせと言っている。」
と、麻原が言ったらしい。
というわけで、丹もソーマも、そして果物も増量されることになる。
その理由は、麻原の子供たちが貪り食っているからなのか、それとも美味しいものをサマナに食べさせてやろうという麻原の親心なのか、定かではない。
ここまでで終われば、あ~、よかった、よかった。
といういい話なのだが、そこはオウム真理教である。
そこには必ず笑いのネタが提供されているのですよ。
果物は最初は生活班のサマナが、他の買い物と一緒に買いに行っていた。
Vはそれとは別に市場にセリに行っていた。
ちゃんとふたつに分かれていたのだが、供物の量が増えることで市場で買ったほうがかなり安いという話になる。
それで、Vがセリのついでに果物も買って帰る様になった。
ここまではまだいい。
問題はこの後である。
最初はVは果物はサティアンへ、その他オウム食の食材と、ただで引き取ってきた生ゴミ、じゃなくてまるごとキャベツや腐ったブドウは道場へと運んでいた。
ところがである。
「神々がもっとよこせと言っている。」発言の後、石井に手を引かれてお供物の修法をしているときに、麻原がポツリとこう言ったのだ。
「供物が少ないな。」
さあ、大変である。
グルのご機嫌をそこねてしまった。
何度も書くが麻原は目が見えない。
目が見えない人に対しては、その周りにいる目が見える人間がきちんと状況を説明する責任がある。
しかし、残念な事に、石井にはその能力がないのである。
麻原に供物が少ないと叱られた石井はすっ飛んできて、Vを叱りつけた。
「何をやっているんですか、あなたは!」
「オウム食以外は、全部サティアンに運びなさい!」
もちろんの事であるのだが、愛人である石井には、下々の者達が苦労して安く食料を調達していることなど知る由も無い。
石井は金庫番だから金が出て行くことには敏感だが、買ったわけではなくただで引き取っているものには金の動きは無い。
そして、これまた当然の事なのだが、Vは驚いて聞き返す。
「え、全部ですか?」
これに石井は、「当たり前です。」と答える。
まったく困ったもんだよねえ。
どちらも主語が抜けたまま会話をしている。
正しく意思の疎通など出来るはずがない。
石井が全部と言っているのは、もちろん供物、つまり果物の事である。
Vが全部と言っているのは、もちろん生ゴミの事である。
アホがふたり揃うと恐ろしい事が起こってしまう。
なんて悲しいんだ。
しかもこのふたり、護摩供養には参加していない。
他人の苦しみには完全に無頓着なのだ。
これぞまさにオウム真理教という気がする。
オウムでは何をやっても、大抵はこんな感じである。
かくして、ただで引き取られた大量の生ゴミがサティアンの高貴なる祭壇へと運ばれ、偉大なグルが修法してエネルギーを込め、幹部たちは逃げ、サマナたちは無常の苦しみを味わう。
一気に修行が進んでしまう。
なんて素晴らしいんだ!