後から色々と思い出してくることがある。
そう言えば、広瀬に手伝って欲しいと頼まれた翌日だったと思うが、麻原から電話がかかってきた。
ドラム缶で培養するには何が必要かと聞かれたので、ベルトヒーター、ポンプ、温度センサーと答えた。
麻原は、「分かった、こちらで用意しておく。」と言ったように思う。
それともうひとつ。
村井が失敗し、僕がボツリヌスの担当から外された後のことだ。
サティアンでの通常のワークに戻っていると、上祐と村井がやってきた。
僕と同じ部署に多少は化学をかじったサマナがいたので、上祐はそのサマナに化学反応によって発熱や冷却が可能なのかを聞いていた。
なるほどね、と思った。
村井が電気やスチームを使って失敗したので、それ以外の方法が何かないか探っていたのだと思う。
麻原は村井が失敗した後もボツリヌスを何とかしようとして、上祐を呼び寄せたのだろう。
上祐は同じ理系ではあっても、村井とは発想がまるで違う。
このふたりの対比は面白いなと思いながら話を聞いていたが、サマナが上祐に色々と説明するのをその横から村井があーだこーだと茶々を入れて邪魔をするのが妙に可笑しくて笑いそうになってしまった。
普段は自信満々で行動している村井が、上祐といるとライバル心むき出しになっているのは、いいものを見れたと思う。
僕がまだ担当していたときも、水酸化カルシュウムを使ったらどうかという話しも少し出ていたが、現実的ではないということで却下になった。
上祐も結局、化学反応による方法は見つけ出せなかったようである。