上九に戻った僕はもう一度プラントがどんなものか見てみることにした。
右手前にあるタンクは、10トントレーラーの水を全部入れてもまだ余裕がある。
ということは、連結されたタンクは40トンほどの容量があったのかもしれない。
タンクひとつの高さは2メートル以上、横幅は3メートルぐらいだろうか。
前と後ろに金属製の梯子があり、上に登れるようになっていた。
登ってみると、まさに鉄の塊とでもいうべきものから、何本もの配管が不恰好に伸びていた。
異様な光景に思えた。
何か違和感がある。
オウムを離れた後に何度かオウムがらみの夢を見たことがあるが、その中で一番多く登場したのが実はこのときに見た光景だった。
それだけ印象に残っているということなのだろうけれど、そのときに感じた違和感の理由は分からなかった。
しかし、今考えてみるとその理由が分かる気がする。
自然には自然ならではの美しさがあるが、人間が作ったものにも美しさはある。
たとえそれがドラム缶のような一見美しさとは関係ないように見えるものでも、人間のために役に立つようなそれなりの外見をしている。
ところが、この巨大なプラントにはそれがなかった。
この巨大な鉄の塊は、人間のために、世の中のために何の役にもたたない。
そういう姿形をしていた。
おそらく僕はそれを感じ取っていたのだと思う。