これも当たり前のことなのだが、糞尿を投入してメタンガスを発生させたからといって、 投入した糞尿が消えてなくなるわけではない。
そのまま溜まり続けるので外に出してやらなければいけない。
メタン発酵の場合も堆肥の発酵と同じように完全に発酵が終わればいい肥料になる。
堆肥の場合のように好気性発酵で発熱して殺菌するのとは違うが、メタン細菌の場合は嫌気性発酵で酸素のない状態で雑菌は死滅する。
問題はどこから取り出すのかということだが、この発酵槽には取り出し口がない。
本来なら投入口の対角線上の反対側に取り出し口をつけるべきなのだが、今更遅い。
投入口から取り出すしかないのだが、それでは投入したばかりの未発酵の糞尿が出てきてしまうことになる。
さらに言うならオウムは殺生になるからという理由で農業はやらない。
肥料があってもどこにも使う場所はなかったのだ。
そしてさらに冬場対策が絶望的だった。
ある程度の温度がなければ発酵しないのだが、冬は外は地面が凍りつく寒さとなる。
温めるための熱源もなければ、ヒーターやポンプを使うための電源もない。
オウムというのはいつもそうなのだが、これでもかというぐらい杜撰な計画で見切り発車してしまう。
それでメタン発酵のワークはこれにて終了ということになるのだが、このころあるサマナからボツリヌスという言葉を聞いた。
初めて聞く言葉であったのだけど、なんでもからしレンコンで食中毒を起こしたことがあったらしい。
ボツリヌス菌は嫌気性細菌だから普通の雑菌が生きていけない環境でも増殖できるという話を聞いて、なんだメタン細菌と同じだなと思って聞き流し、その場は終わった。
ちなみにこのサマナは温熱で死亡し、今はもういない。