レオンに婚約者が決まった。
相手は侯爵家の令嬢。
実は、生まれた時にはすでに両家の間で
話が進められていたらしい。
ある程度の年齢になったところで、
正式に婚約する。
そういう予定だったようだ。
僕としては、特に気になる話でもなかった。
レオンが次期国王になるのなら、有力な侯爵家と縁を結んでおいた方がいい。
レオンを支持する派閥も安定するだろう。
僕自身、レオンが王になることに
反対するつもりはない。
僕は王様になりたいわけじゃないからだ。
前世では独身だった。
だから今世では、できれば結婚してみたいとは思っている。
ただ、まだ三歳だ。
相手が見つかるのは、もう少し先でもいい。
僕はそんなふうに、のんびり考えていた。
その頃。
僕の知らないところで、母のリリアは別のことを心配していた。
「レオン殿下は、もう婚約者が決まったのね」
「はい」
エレナが答える。
リリアは少し黙ってから、ぽつりと呟いた。
「……アルには、見つかるのかしら」
「アル様ですか?」
「ええ」
リリアは少し困ったように笑った。
「アルは私の子でしょう?」
「はい」
「それに……私は妾だったから」
その言葉に、エレナも少しだけ表情を曇らせる。
「アル様は第一王子です」
「それは分かっているわ」
リリアは小さく息を吐いた。
「でも、貴族の娘を嫁がせる側からしたら、
どうなのかしらって」
「……」
「レオン殿下なら、侯爵家の令嬢でも問題ないでしょう?」
「そうですね」
「でもアルは……」
そこまで言って、リリアは言葉を止めた。
そして、少しだけ笑う。
「こんなに可愛いのに」
「……はい」
「大きくなったら、きっと男前になると思うのよ」
「私もそう思います」
エレナが即答すると、リリアは少し嬉しそうに笑った。
「でしょう?」
「はい」
「なのに、どうして誰もアルを選んでくれなかったら……って考えてしまうの」
「まだ三歳ですよ」
「そうなんだけど……」
リリアはアルのいる方を見つめる。
「母親って、そういうものなのかしらね」
そんな会話が交わされていることを。
アルは、まだ知らなかった。