暇なのだ。
いや、正確には自由に動けない。
王子という立場がある以上、勝手に王宮を歩き回るわけにもいかない。
人の目もある。
だから、好きに動けるのはエレナが近くにいる時くらいだ。
部屋で遊んでいるだけなら問題ない。
でも、さすがに毎日それでは飽きてくる。
そんなある日。
母のリリアのところへ、商人がやってきた。
どうやら、母が身につける物や日用品などを扱っている商会らしい。
かなり大きな商会ではあるが、王家御用達というほどではない。
第一夫人の派閥にも取り入っていないらしい。
王宮には出入りしているものの、政治的にはそれほど力を持っていない商会だった。
僕は少し考えた。
……ちょうどいい。
せっかく商人が来ているんだ。
外の話を聞いてみよう。
紹介された商会長は、エドモンドという男だった。
僕はエドモンドに色々と聞いてみた。
「商人って、どんな仕事をしてるの?」
「どんな物を売ってるの?」
「どこから買ってくるの?」
「遠いところにも行くの?」
思いついたことを、そのまま聞いていく。
エドモンドは最初、少し困った顔をしていた。
三歳の王子から、こんな質問をされるとは思っていなかったのだろう。
それに。
――こんな話をしてしまって大丈夫なのだろうか。
そんな心配もあるようだった。
「ええと……アルヴィン殿下は、こういった話がお好きなのですか?」
「うん。面白い」
僕が素直に答えると、エドモンドは少し笑った。
「では、私が知っている範囲でよろしければ」
そこからは、少しずつ話してくれた。
王都にはどんな商人がいるのか。
どんな商品が売れるのか。
商人同士はどうやって取引をするのか。
遠くの町から商品を運ぶには、どれくらい時間がかかるのか。
僕にとっては、どれも面白い話だった。
本で読むのとは違う。
実際に商売をしている人から聞くと、知らないことがたくさんあった。
そして、その中で気になる話が一つあった。
「商人ギルドには、発明した物を登録する制度もございます」
「発明?」
「はい」
エドモンドが説明してくれた。
新しい道具や技術を考えた者は、商人ギルドに登録料を払って登録することができる。
登録された発明を他人が商売に使う場合、発明者へ使用料を払う。
その権利は、発明者が死ぬまで続く。
「へぇ……」
僕は思わず身を乗り出した。
エドモンドは少し驚いたようだった。
「興味がおありですか?」
「うん」
これは……。
地球でいう著作権や
特許みたいなものだろうか。
しかも。
発明した本人が直接商売をしなくてもいい。
登録しておけば、誰かが使うたびに
使用料が入る。
僕は少し考えた。
目立ちたくはない。
王子として注目されるのも嫌だ。
でも。
お金は欲しい。
そして、できればこっそり稼ぎたい。
そこで思いついた。
……眷属にやらせればいいんじゃないか?
僕自身が発明したことにする必要はない。
眷属を作って、その眷属に発明させる。
そして、その名前で商人ギルドに登録する。
僕は表に出ない。
眷属を通して、お金だけ入ってくる。
……これ、かなりいい方法なのでは?
三歳児の僕には、まだ自由にできることが少ない。
だけど。
少しずつ外のことを知っていけば、できることも増えていくかもしれない。
そう思うと、急に外の世界が
面白く感じられた。