転生したのでしょうがなく 08 家族 | aitocolab ブログ 
「アル様ー」

「朝ですよー」

「うんー……」

アルヴィンは薄く目を開けた。

けれど、すぐに目を閉じる。

「……アル様?」

「あと十分ー……」

「ダメです」

即答だった。

「あと五分……」

「ダメです」

「三分……」

「ダメです」

「じゃあ一分……」

「アル様」

声が少し低くなった。

それでもアルヴィンは布団の中から
出てこない。

「……起きる気、あります?」

「あるよー……」

「では、起きてください」

「……もうちょっとだけ」

「もう!」

次の瞬間。

バサッ!

布団が勢いよく剥がされた。

「もー起きなさい!」

「うわっ!?」

冷たい空気が身体に触れる。

そして両脇に手を入れられ、そのまま無理やり身体を起こされる。

「ほら!」

「ちょ、待って……!」

完全に寝ぼけていたアルヴィンだったが、身体を起こされたことでようやく目が覚める。

「……おはよう」

「はい、おはようございます」

満足そうに返される。

アルヴィンはまだ眠そうな目で、
目の前の女性を見る。

「……もう少し優しく起こしてくれてもよくない?」

「何度も優しく起こしました」

「……そうだっけ?」

「はい」

「…………」

アルヴィンは少し考えてから、
諦めたように息を吐いた。

「じゃあ、起きます」

「最初からそうしてください」

今日もベルク王国の朝は、こうして始まった。

――改めて、自己紹介をしておこう。

僕の名前は、アルヴィン・ベルク。

ベルク王国の第一王子……一応ね。

転生してから三年。

現在、三歳。

これまで何度か暗殺されかけたけど、
ことごとく失敗。

今では平和に暮らしている。

王子としての生活は、
思っていたよりも普通だった。

身の回りの世話は侍女の
エレナがしてくれている。

食事も用意されるし、服を選ぶ必要もない。

まだ三歳だからなのか、それとも僕が妾の子だからなのか、教育らしい教育も
始まっていない。

毎日、遊んだり、部屋で過ごしたり。

今のところは、かなり自由な生活だ。

まあ、三歳児としては
こんなものなのかもしれない。

そんなわけで――

今日も特に予定はない。

……と思っていた。


……ただ、僕には一つだけ嫌な習慣があった。

定期的に、第二王子のレオンが僕のところへやってくる。

いつも、大勢の大人を連れて。

「レオン様は本当にお利口ですね」

「さすが第二王子です」

「アルヴィン様も、レオン様を見習われるとよいですな」

そんな言葉を、僕の前で何度も聞かされる。

どうやらレオンは、
そういう環境で育っているらしい。

だからなのか。

レオンも、僕を自分より下だと
思っているようだった。

「アルヴィン、これ見て」

レオンが新しいおもちゃを見せてくる。

「すごいね」

「でしょ?」

嬉しそうに笑うレオン。

しばらくして、レオンが僕におもちゃを
差し出した。

「アルヴィンも使ってみる?」

「いいの?」

僕が手を伸ばそうとすると、

「レオン様、それは……」

侍女がやんわりと止める。

「大切なおもちゃですから、
こちらで遊びましょう」

「……そっか」

レオンは素直におもちゃを引っ込めた。

「じゃあ、ダメ」

「……」

別に壊すつもりなんてないんだけど。

でも、こういうことは何度もあった。

レオン自身は、僕に貸そうとすることもある。

けれど、そのたびに周りの大人が口を出す。

そうやって育てられているせいなのか。

レオンは少しずつ、僕を自分より下の存在として見るようになっていた。

母、リリアとの関係も、少し特殊だった。

母も、何度か命を狙われていた。

だから僕は、赤ん坊の頃から
母にべったりだった。

母から離されそうになると、ぐずる。

母の近くにいれば、何かあってもすぐに
対応できる。

もちろん、母を守るためだ。

決して、母が美人で可愛いからじゃない。

……本当に、守るためだからね?

そんな僕を見て、エレナはいつもジト目を
向けていた。

何か言いたそうな顔だった。

三歳になった今では、少し事情が変わった。

流石に周りの人の目が
気になるようになってきた。

それに、最近は暗殺も起きていない。

さすがに、いつまでも母にべったりというわけにもいかない。

母のところへ行こうとしても、

「もう三歳ですからね」

なんてエレナに止められる。

……クソっ。

もう少しだけ、べったりしていたかった。