神凪雷真、30歳。
定職には就いておらず、
アルバイトを転々とする
フリーターである。
特別な技能も資格もなく
これといった成功体験もない。
本人もそのことを自覚しており
自信を持てる要素は多くない。
そんな彼が、唯一と
言っていいほど心の拠り所に
している習慣がある。
深夜24時を過ぎてから、
異世界系の作品を漁る事だ。
アニメ、ネット小説、漫画
日々の現実では感じられない
達成感や高揚感を、
彼はそこに求めている。
しかし、その小さな楽しみさえ、
逃避と自己権をの狭間で
揺れ動いている。
「こんな生活でいいのか」と
思いながらも変えられない、
停滞した日常。
だが、この平凡で冴えない
30歳の男にまさか
自身が憧れ続けた”異世界”へと
踏み出す瞬間が
迫っていることなど
この時点では、
誰も知る由もなかった。