異世電 002 選ばれたくなかった | aitocolab ブログ 異世界で魔人と戦ったら電力が溜まりすぎた件

気がつくと、

神凪雷真は見知らぬ場所に

立っていた。

 

足元には淡い光のラインが走り、

空間はとこまでも白く、静かで

現実感に乏しい。

だが、配置されたカウンターや

番号札の機械だけが妙に

生活感を放ち、

どことなく”市役所”を

思わせる作りになっている。

 

ここがどういった

場所かは分からない。

 

でも直観で理解した。

 

 

 

(...ああ、ホントに”来ちゃた”のか)

 

胸の奥で、小さく震えるような

喜びが湧く。

 

しかしその感情は、

ワクワクよりも

重く、鈍いものに

押し潰されていく。

 

雷真は思い出す。

 

異世界に行く妄想は、

何度もした。

可愛い女の子たちと

いちゃラブして、

俺TUEEで無双して、

気づけばハーレムができて

そんなテンプレ展開を、

深夜に布団で考えるのは

楽しかった。

 

ただ、それはただの

妄想だからこそ

楽しかったのだ。

 

現実的に考えれば、

異世界は不便で、

危険で、孤独だ。

スマホもない、ネットもない、

現代の便利さの多くが消える。

家族にも二度と会えない

可能性が高い。

 

だから雷真は、

ずっと前から結論を

出していた。

 

異世界なんて、

実際行きたいわけじゃない。

 

妄想は妄想のままだから、

安心して楽しめるのだ。

 

そんな彼が、今、

カウンターの奥に座る

灰色のスーツに

くたびれたネクタイ。

髪は少し薄く、

目つきは悪くないが

仕事に疲れたような

雰囲気のおじさんと

目があった。

 

「...神凪雷真さんですね。

どうぞこちらへ。」

 

(うわ、本当に”始まる”

感じだ...けど...俺、

本当に異世界に行くつもりなんて

なかっただよ...!)

 

雷真は震える声で問いかけた。

 

「あ、あの...これ、

キャンセル...できませんか?」

 

おじさんは淡々と首を傾けた。

 

「キャンセルですか?」

 

「はい...! その...

来る前から

考えてて異世界って

危険で、不便で家族にも

会えなくて、正直

行きたくないんです!」

 

おじさんは書類をめくりながら、

無機質に告げた。

 

「異世界渡航の

キャンセルは不可です。

一度”召喚対象”と確定した方の

事態は受理できません。

規程です。」

 

雷真の胸に、

じんわりと絶望が広がる。

 

(やっぱり!俺は妄想だけで

楽しむ派だって、

あれほど自分でも

分かっていたのに!

なぜよりによって、

本当に呼ばれるんだよー!)