なぜ、高校中退者が東大に受かったのか? | 弁護士 井上洋一の資格道~108の資格を超えて~

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2019年に宿願の108資格を達成しました!
2023年9月に200資格到達。
愛知の町弁が、資格の力を駆使して悪を斬るため、様々なライセンス取得を目指します(現在233)。

知り合いの学校の先生から、「なぜ、高校中退者が東大に受かったのか?」というテーマで、生徒たちの前で話をして欲しいと頼まれました。

私が、「高校中退、東大卒の弁護士」をフレーズに使っているせいなんですが、正直なところ、弱ったなあと思っています。

だって、実際は、「挫折からの復活」みたいな感動ストーリーや、合格必勝法があるわけでもないですから。そんな必勝の勉強法があれば、本でも出版して一稼ぎしています(苦笑)。

現実はとても地味な話ですが、東大合格への道を、少し振り返ってみます。

 

・最初の高校を中退

中退の理由は、若気の至りといいますか、甘酸っぱい思い出もありますが、基本的には、私が進学校の勉強に付いていけなかったことです。

最初に入学した高校は、愛知県豊田市にある豊田西高校という進学校でした。今思い返すと、自由な校風で良い高校だったのですが、通学していた当時は本当にきつかったです。

授業、補習、試験、そして何より教科書や問題集の全てが激難度で、入学当初から、私は授業に全然付いていけませんでした。進学校は勉強のペースが速いので、いったん落ちると這い上がることは困難です。進学校の悲哀です。

私の通知表は複数の科目で成績の下に赤い線が引かれていました(いわゆる「赤点」です。)。私は、2学期の終わりには、「もうダメだ。」と自主退学することにしました。

今でも名前を覚えていますが、担任の加藤先生が自宅まで来て最後まで引き留めてくれたことを、懐かしく思い出します。そして、私の両親は教師でしたが、「まあ、好きにしなさい。」と何も責めずに辞めさせてくれたことも有り難かったです。

 

・2度目の高校への入学

退学後、私は、ブラブラしていましたが、しばらくして悔しさや情けなさが込み上げてきました。負けたままでは終われないという気持ちです。親は、「全日制の普通科は大変だから、もっと気楽なところにしたら。」と言ってくれましたが、もう一度自分と戦いたかった。

ということで、私は、愛知県岡崎市の岡崎東高校へ入り直しました。ここは進学校では無く、今でも卒業生で東大に受かったのは私だけのようです。

ただ、当時の私には、それが何より助かりました。教科書も問題集も基本的で易しく、受験対策の補習なんかありませんでした。授業のペースもゆっくりだったので、およそ勉強から無縁になっていた私でも、何とか食らい付いていけました。

それでも、2度目の高校生活は気が遠くなる程長く、つらかったものです。何が一番つらかったかと言えば、周りが全員年下であること。私が中退して来てるから当たり前なんですが……。

このとき初めて、学校教育の同質性の高さを実感しましたが、つくづく異質な存在には耐え難い環境だと思います。幸いにも私は身体が大きく、なぜか「少年院帰り」という噂が立ったので実害はありませんでしたが(苦笑)。

それでも、同じであることを強いる空気には挫けそうになりました。気を抜くと、自分がバラバラになってしまいそうで、毎日通学するだけでヘトヘトになったものです。10代の頃の4年間は無限の時間に感じますが、さしずめ賽の河原の石積みのような気分でした。

だから、私は、よく学校をさぼりましたし、憂鬱な日は休みました。そのため、出席日数が足りなくなり、日数を稼ぐための補習をしばしば受けました。

でも、私は、皆勤賞なんて要りませんでしたから。とりあえず、卒業できれば私の勝ちなので、サボりたかったらサボる、逃げたかったら逃げるというスタンスを貫きました。ただし、敵から目をそらさないという覚悟で。

 

・勉強の話

話がそれましたが、勉強の話を。

もちろん、最初から東大合格を目指していたわけではないです。高校を中退した私が、大学に進学するとは自分でも思っていませんでした。目標は、「今回は高校を卒業すること」でした。低い目標でしょう?でも、私にはそれだけでした。

とにかく、授業について行くためと割り切って、毎日2時間、翌日の授業の予習だけはしました。ただ、苦労したくなかったので、教科書ガイドというアンチョコを使って、予め答えを見ておくというインチキ予習です。

ある教師からは、「アンチョコ使うのは卑怯。本当の力は付かない。」なんて言われました。そういう考え方もあるのでしょうが、私は、周囲の評価なんて気にしてる立場ではありませんでした。私には、嘘の力でも必要でした。

周囲の雑音は気にせず、周りと自分を比較せず、たとえ亀の歩みでも、昨日の自分より一歩進んでいれば良しとしました。

毎日2時間の予習を欠かさないこと、これだけでも、継続すれば絶大な効果がありました。ちょうど今頃の季節だったでしょうか、3年生の夏の全国模試の結果で、担任から「井上、東大が合格圏だぞ!」と言われました。そこで、はじめて東大受験を意識しました。

担任からは、難関大学用の問題集や予備校のパンフレット・DVDを渡されました。でも、難関大学用の問題集を見ても、分からなくて気持ちが落ち込みましたし、受験予備校講師の話を聞くと不安になるだけでしたので、自分には向いていないと感じました。

3年生の夏以降、赤本こそ買って出題傾向を見ましたが、応用問題は一切やらず、受験予備校にも一度も通いませんでした。

私がしたことは、ひたすら教科書レベルの基本問題を解けるようにしただけです。教科書ガイドの要領で、分からなければすぐに答えを見ました。

たとえば、数学の問題集にチャート式というものがありますが、私は、数学は大の苦手だったこともあり、最後まで白チャートしか使いませんでした。黄色ですら諦めました。

私の「基礎しかやらない」「すぐ答えを見る」勉強法は今でも変わりませんが、これで100の資格に合格したわけですから、あながち間違った勉強法でもないでしょう。

さあ、とうとう東大入試の本番です。

試験会場は、目黒区の駒場キャンパスでした。

まさか合格してここに何年も通うことになるとは思っていなかったので、記念受験感覚で、プレッシャーや気負いとは無縁でした。そういえば、気が抜けすぎていたのか、数学の試験で使うコンパスか分度器を忘れてしまって、図形をフリーハンドで書いたんですよね。でも、コンパスはなくとも、メンタルは絶好調でした。

試験科目の問題は一見複雑で応用的でしたが、全て基礎を組み合わせただけのように感じました。問題文を自分が分かるレベルにまで分解して、一つずつ分かることだけ書きました。

実際はほとんど分からなかったので、分からないなりに、「ここまでは、こういう考え方で計算しました。ここから先はよく分かりませんが、こういう方針で考えれば良いと思います。」という体で回答しました。自信をもって正答が導けた設問は1つもなかったのですが、途中まで考えが及ぶ限りは書き、全ての問題で白紙回答だけはしませんでした。

私はもう完璧を目指してはいませんでした。問題のボリュームは大変なものでしたから、分かることを書き、考えても分からないことを切り捨てる、即断即決に徹しました。

応用論点は一つも知らなかったし、周囲の受験生のレベルも知らなかったので、何の迷いもありませんでした。私にできたことは、教科書レベルの基本的な事柄を書き連ねることだけでした。

しばらくして、合格通知が届きました。

自分では何一つ正答が分からなかったので、合格の知らせを聞いてもピンときませんでしたが、「ああ、完璧じゃ無くてもいいんだ。基本でいいんだ。」と何だか嬉しく感じた記憶です。

それと、両親が少し喜んでくれたことも嬉しかったですね。彼らは、退学も再入学も大学受験も、何も口出ししてこず、私の自由勝手にやらせてくれました。教師という職業柄、道を踏み外した人間を何十と見ているからでしょうが、大したものだと思いました。

 

さて、物語ならめでたしめでたし、ハッピーエンドです。

しかし、私が、本当の挫折を知るのは、この後、東大の赤門をくぐってからでした。凡人には辿り着けない才能、彼らとの戦いに比べれば、ここまではそよ風のようなものでしたから。

この話は、また後日、「なぜ、高校中退者が弁護士に受かったのか?」として展開しましょうか(^_^;)

 

・まとめ

以上のわけで、「なぜ、高校中退者が東大に受かったのか?」と問われても、結果論で偶々のラッキーだった部分が大きいです。あまり参考になることもないのですが、少しは普遍性のありそうなことを抽出しておきましょうか。
【リセットの重要性】

私の場合、中退してやり直したことが吉と出ました。

ただ、このリセットは、リスクが極限に高い、大ばくちだったと思います。リセット(損切り・切り替え)を恐れる必要はありませんが、大きなリセットはしないで済むようにしたいです。

そのためには、日々の小さなミスや躓きは、その都度リセットしてやり直す。

つまらないプライドは捨てて、自分の失敗や過ちは認める。

ボタンの掛け違いは早めに直す。まだズレが小さいうちであれば、何とかなりますから。

同様に、やせ我慢をせずに、早め早めに気持ちを切り替えることも大事です。

自分の目標から目をそらさない限り、疲れたら休んでいいし、嫌なことからは逃げてもいいと思います。
【基本に忠実】

私は、基本しかやりませんでした。

余裕がなかったので、難関大学のテキストや応用問題集をやれなかったというのが正直な話です。このテーマは、「経営も試験もマンガで十分!?」でも触れましたので、ご参照ください。

私は、高校卒業が最大の目標でしたから、もともと重厚長大な目標は立てませんでした。

むしろ、目の前の基本的な課題やステップを一つずつクリアしていくこと、できるだけ易しい小さな目標を少しずつ達成していくことを大事にしました。

結果として、それが合格に繋がったように思います。
【他人と比較しない】

私は、スタート時点で負け犬でしたから、他人と比較している場合ではありませんでした。

もし、周囲と比較してたら、心が折れていたと思います。

それに、有り難いことに進学校ではなかったので、難関大学の受験者がいなかったことも幸いしました。

比較対象や情報がありませんでしたので、周囲に振り回されずに済みました。

もちろん、自分の成長に資するなら、他人と比較したり、情報を取り入れることは重要です。でも、他人と比較してメンタルを崩したり、情報に踊らされるリスクが大きいことは頭の隅に置いておくべきです。

私が塾講師をしていて一番悩ましかったのは、情報に振り回されて実力を発揮できなくなった子たちでしたから。

ゴールの秘訣は、他人との比較ではなく、昨日の自分より一歩だけでも前へ進むこと、ただそれだけだと思います。

 

う~ん、拙い自分語りをまとめても、やっぱり地味ですね(>_<)

勉強法のテクニックでも紹介して話を盛れればいいのですが、私は、毎日基礎鍛錬していただけなので、なかなか思い出せないんですよね。

受験生の方等で読んで頂けたら、こんな勉強法があるとか、テクニックがあるとか教えてくださいね(^^)/