前回の投稿では、区市町村の小中学校における特別支援教育とインクルーシブについて質疑した内容をまとめました。今回は「都立特別支援学校」に関する質疑です。

 

前回の投稿↓

 

 

 

 

特別支援学校のインクルーシブより日常的な「副籍交流」を

 

 

さて、インクルーシブな教育を推進するためには、どこの学びの場であっても「日常的かつ継続的なインクルーシブな環境」を保障していくことが重要だと考えております。

 

そのためには特別支援学校における「副籍交流」の充実は欠かせない重要な施策だと考えています。

 

Q.都教委は、令和4年度末に実施した副籍交流に関する調査結果を踏まえて、本年度中に「副籍ガイドブック」の改訂を行うとのことだが、調査から明らかになった実態と改訂の方向性について伺います。

 

 

<都教委答弁>

都教育委員会は、令和4年度末に、副籍交流の実態調査を実施し、特別支援学校及び地域の小・中学校の保護者と教員、計19,043人から回答を得た。

 

これによると、特別支援学校に在籍する子供の保護者の約65%が「交流に満足している」と回答している一方、「満足していない」とする保護者の多くは、"交流回数を増やして欲しい"と回答している。

 

また、特別支援学校の教員の約半数が、「副籍交流を更に進めていくためには、学校間の事前打合せ等の効率化が必要である」と捉えていることが分かった。

 

これらの結果を踏まえ、都教育委員会は、交流回数の増加等に向け、学校間の調整の簡略化を図るとともに、オンラインを活用した交流の在り方を示すなど、「副籍ガイドブックの改訂」を進めている。

 

国立市では、副籍交流を活発にするための事業を始めています。こういう先進的な事例もヒアリングしながら、ガイドブックの改訂を進めていただけますようお願いします。

 

「インクルーシブ教育」を広げていくためには、特別支援学校からの取り組みがとても重要です。

 

これまでの「希望する保護者が副籍交流できる」ではなくて、希望しない保護者やお子さんの特性上交流が難しいと判断される場合を除いて、すべての特別支援学校の児童生徒が副籍交流を日常的かつ継続的に実施できるような仕組みにシフトしていくことも考えていただけますようお願いします。

 

 

  

 

東京都・特別支援教育推進計画/第二期/第二次計画3カ年計画の真ん中の年です

 

 

「東京都特別支援教育推進計画(第二期)」の第二次実施計画令和4年から6年までの3ヵ年計画で、今年度はその真ん中の年に当たります。特にこの計画で期待している取り組みについて、実施状況について伺います。

 

 

 

 

特別支援学校で学習用デジタル教材の開発

 

 

<追記>

この計画の施策の方向性3ー1では「デジタルを活用した教育活動の展開」を挙げています。

 

知的障がいのあるお子さんにとって、視覚的で音によるサポートがあり、指による操作で学べ、正解や不正解がその場で分かり、繰り返し学べるデジタル教材はとても効果的だと感じています。

 

息子のニコを見ていても、机に座ってプリントをやるお勉強は20分が限界ですが、タブレットだと遊びの延長で、色々と学んでいるようです。

 

しかし幼児教育レベルだと民間でも良いデジタル教材がありますが、内容が少し学習的になってくると、そういうデジタル教材がなくなってしまうのが、学びを継続するのにハードルだなと感じておりました。

 

この度の計画では、知的障害特別支援学校での「学習用デジタル教材」を開発するということで、期待しております。

 

 

Q.都教育委会は、この計画の中で「知的障害のある児童・生徒のための学習者用デジタル教材」を開発していますが、現在までの取組状況を伺います。

 

 

<都教委答弁>
都教育委員会は、知的障害のある子供たちが、デジタルを活用して、効果的に学習することができるよう、昨年度(令和4年度)から3年計画で、算数のデジタル教材を開発している。昨年度作成した教材は、画面上の図形を動かして重ね合わせたり、ものの数を数えて数字をタップしたりすることにより、瞬時に正解が表示されるなどの工夫をしており、都立特別支援学校では、本年度から、これを授業等で活用している。

 

都立特別支援学校で、一人一台のタブレットが用意されており、一日1回程度このタブレットを活用して、個々にあったことにチャレンジしている様子を見てまいりました。

 

民間のさまざまなアプリを活用したりしておりますが、なかなか知的障害のある子のニーズに合わせたアプリというのはないので、こういう取り組みは、都教委の貴重な財産になっていくことともいます。

 

 

特別支援学校における「準ずる教育課程」地域の学校と連携

 

 

この計画の中では、視覚障害や聴覚障害・肢体不自由等の特別支援学校では、知的発達に遅れがなく、いわゆる小学校、中学校、高等学校の通常の学級で行われている教育に「準ずる教育課程」で学んでいる児童生徒がいます。

 

この計画では、準ずる教育課程の対象児童生徒があまりに少ないため、「こども同士で学び合う」という機会が足りていないことや、担当教員も孤独であることなどから、Q. 準ずる教育課程を設置している特別支援学校と、地域の学校が連携して、教科指導に関する研究を行っているが、本年度の取組状況を伺います

 

 

<都教委答弁>

都教育委員会は、準ずる教育課程における指導の充実を図るため、都立特別支援学校25校の教員が、地域の小、中、高等学校で行われる授業研究会等に参加することにより、授業改善の推進を図っている。

 

具体的には、特別支援学校の教員が、実験を通して科学的な思考を身に付けさせる小学校の理科の授業や、一人1台端末を用いた意見交換を通して考えを深めさせる高校の国語や数学の授業等を参観した後に、教員間で協議を行うなど、教科指導に関する専門性を高めている。

 

この取り組みは、対象者が少ないのであまり光が当たりませんが、たゆまず、きめ細やかな特別支援学校での教育の推進に取り組んでいることが見えてまいりました。

 

 

知的特別支援学校でも医療的ケア児バス運行開始

 

さてこれまで毎年のように(文教委員会の質疑で)お伺いしてまいりましたが、医療的ケア児の専用車両について伺います。

 

Q.「医療的ケア児専用通学車両」について、昨年度から知的障害特別支援学校でもモデル事業として運行していると聞いているが、取組状況について伺います。

 

 

<都教委答弁>
都教育委員会は、令和4年度から「医療的ケア児専用通学車両」について、知的障害特別支援学校や知的障害部門の児童等を対象として、モデル事業を開始
 
令和4年度は2校で開始、令和5年度は3校を加え、計5校に拡充し実施。モデル事業では、安全な運行のために必要な校内の体制、乗車までの手続き、乗車中の配慮事項などについて検討。

 

知的障害特別支援学校ではそもそも学校に配置されている看護師が少ないという現状があります。

 

Q. 知的障害特別支援学校での医療的ケア児専用通学車両運行にあたっては、肢体不自由特別支援学校と比較して、一層、看護師の確保が重要になりますが、現状と看護師の確保策について伺います。

 

 

<都教委答弁>
都教育委員会は、肢体不自由特別支援学校に配置している総合非常勤看護師について、知的障害特別支援学校の医療的ケア児専用通学車両にも兼務として乗車できる制度とするなどして、安全な運行のための体制整備を推進。
 
モデル事業を実施している知的障害特別支援学校において、令和5年9月時点での医療的ケア児専用通学車両の看護師乗車の割合は97.7%

 

肢体不自由特別支援学校と連携して、知的障害児特別視絵学校の医療的ケア児バスの看護師はほぼ配置されている状況が分かりました。医療的ケア児が自立した学校に通えるように取り組みを一歩一歩進めてくださってありがとうございます。

 

 

医療的ケア児の保護者付き添い期間短縮

 

 

医療的ケア児の保護者にとっては「付き添い期間を短縮する」ための取り組みを進めておられると思います。

 

(令和5年度予算概要説明書より)

Q. 医療的ケア児の保護者の付添い期間短縮化のための、現在の取組状況を伺います。

 

 

<都教委答弁>
令和3年度から2年間、医療的ケア児の「保護者付添い期間の短縮化モデル事業」を実施し、令和5年度から都立特別支援学校全校で本格実施。
 
モデル事業においては、入学前から就学予定児が通う施設等に看護師を派遣し、健康観察を実施するなど短縮化に向けた校内体制を整備。
 
令和5年度、肢体不自由特別支援学校に入学した医療的ケアのある児童の5月末における保護者の付添い解除率は、前年度の54.4%から63.3%に増加。

 

この取り組みは令和4年度末からスタートして、5月末に6割以上のお子さんが付き添い解除に至ったことが分かりました。保護者の就労継続に今後もこの取り組みをおこなっていただけますようお願いします。

 

 

特別支援学校の給食がすごい

 

 

さて、都立特別支援学校に子供を転校させて驚いたことが、特別支援学校の充実した給食です。

 

地域の学校では、ほぼ毎日、給食を食べることができなかったのですが、都立の特別支援学校の給食は、毎日完食していると伺っています。

 

しかも自立して給食を食べることができていなかったのに、支援学校に転校してからわずか三ヶ月で自分で食べるようになっちゃったというので、本当にすごいなぁと感激しております。

 

Q.特別支援学校の給食調理においては、どのような工夫がなされているのか具体的に伺います。

 

<都教委答弁>

都立特別支援学校の給食では、児童・生徒等の食べる機能に合わせて、食材の軟らかさや、形、滑らかさを調整して調理した「形態食」を提供。この形態食は、普通食と同じメニューになるようにするため、食材ごとに加熱方法や切り方などの調理方法を調整しながら、普通食と同様な味付け、見た目になるよう工夫。かつお節、鶏ガラなどから直接だしを取り、スープやデザートも含めて手作りを基本とし、多様な食品を組み合わせることで、栄養バランスのよい献立を提供。形態食の調理には、専門的な知識や技術が必要となるため、学校栄養職員や調理委託業者に対して、調理実習や摂食嚥下機能の専門家の講義などの研修を計画的に実施し、スキルアップを図っている

 

障がいのある子どもにとって「食べる」ことは、簡単なことではありません。自立して食べられるようになることは、長い人生を支えていく重要な教育活動だと感じております。特に嚥下機能に障害がある子も多く、食べることは「命に関わる」ことでもあります。このようなきめ細やかな配慮と工夫をしながら給食を提供してくれていることに感謝申し上げます。

 

世間では給食の無償化が話題になっていますが、特別支援学校においては、教育的な側面や、個々の配慮が重要なため、給食のあり方については、(無償化されようとも現在のようなきめ細やかな対応の継続ができるよう)慎重にしていただけますようお願いいたします。

 

<追記>

この質疑は昨年11月にしたものです。その後、令和6年度の予算が発表され、都立特別支援学校は給食費が無償化されることになりました。(区市町村の公立小中学校、都立高校も給食費無償化)

保護者の給食費負担がなくなります。

 

 

 

特別支援学校における移動式「冒険遊び場」について

 

 

さて特別支援学校は、環境が非常によく整備されていて一歩中に入れば快適なのですが、子供達を守るために施錠も厳しく、学校を外側から見ると、まるで要塞のようにも見えてしまうなぁと感じています。一般の人たちが、とてもじゃないですが気軽に足を踏み入れることができる感じではありません。構造上仕方ないとはいえ、学校を地域に開放していく機会などを設けていくことで、地域の中にある特別支援学校としてのあり方を模索していくことも必要かなと考えています。

 

私はインクルーシブ公園という政策に取り組んでいますが、「遊び」と「インクルーシブ」は非常に相性が良いと感じております。特に、インクルーシブな遊びを得意とする遊びのプロフェショナルプレーリーダーがいると、障がいのある子もない子も上手に巻き込んで、共に豊かな遊びをつくっていくことができると感じています。プレーリーダーは、「冒険遊び場」や「プレーパーク」と呼ばれる、ルールがなく子供達の自由な発想で多様な遊びをつくっていける遊び場に配置されていることが多いため、遊具がなくても工夫によってさまざまな遊びを生み出すことが可能です。

 

Q. 都では、今年度から特別支援学校の校庭を活用し移動式の「冒険遊び場」を行ったときいていますが、取り組み状況について伺います。

 

 

<都教委>
都教育委員会は、令和5年9月から令和6年1月までにおいて、出前型の「移動式冒険遊び場」を都立八王子西特別支援学校及び都立鹿本学園において実施。
11月までに6回開催し、約1,170名が参加。この遊び場は、近隣の小学校や特別支援学校に加え、放課後デイサービスからも子供が参加。インクルーシブな場となっている。

 

 

特別支援学校での、とっても素敵な新しい取り組みだと思います。しかも多勢の親子が遊びにきていることが分かりました。障がいのある子もない子も遊んでいる様子からも、インクルーシブな取り組みになっていると思います。

 

Q. 参加した子供たちの様子や保護者の声は、どのようなものでありましたか?

 

 

<都教委答弁>
様々な子供が自由な発想で自ら遊びをつくる姿が見られた。
保護者からは「障害をもつ子供が遊べる居場所がないのでとても助かる。」「特別支援学校の校庭で健常の子供たちと障害のある子供が一緒に遊んでいるのはとても大事なこと。」等の声がきかれた。特別支援学校に初めて来たという方も多く、学校を知ってもらう良い機会にもなっている。

 

学習面でのインクルーシブについてはまだまだ制限が多い中で、遊びを通じたインクルーシブな環境を推進しているのは大きな意義があると思います。遊びを通じて地元の親子とつながったり、理解を深めていくことで、次の活動のきっかけにもなりうると感じております。とても良い事例になっていると思いますので、引き続き活動を継続されてください。

 

次は、都立高校における特別支援などに続きます。