今開催されている本会議では、東京都の全職員(警視庁・東京消防庁・東京都教育委員会を含む)の福利厚生について、事実婚と同様に同性パートナーに関する福利厚生を改正する条例案が提出されております。

 

私が所属する文教委員会では、東京都教育委員会の学校教職員の福利厚生に関する条例改正案について審議しました。(令和4年9月30日)

 

質疑内容について共有させていただきます。

 

 

 

<龍円>

令和2年12月の都議会文教委員会で、介護休暇の対象になる要介護者について、「同一の世帯に属する者」として同性パートナーについても含めるという改正があり、その審議をさせていただきました。当時のブログ↓

 

 

 

その際に、東京都人権尊重条例で性自認や性的指向による差別を禁止していながらも、介護休暇以外の福利厚生をすぐに改正できないのには、そもそも東京都にパートナーとの関係性を客観的に証明するパートナーシップ制度がないことに起因していることがありました。

 

そういったことから、「東京都におけるパートナーシップ制度の創設の実現を目指す」ことを、この文教委員会で宣言したのを、昨日のことのようによく覚えています。

 

その2年後の、東京都でこのようにパートナーシップ制度が(11月1日に)創設されることになり、それに合わせて(東京都教育委員会の職員の)福利厚生に関する条例改正案を本日審議できることを、大変嬉しく思います。

 

パートナーシップ制度の開始とともに、東京都の福利厚生についても同時に使えるようにするというのは、東京都として大変な情熱で注力してきたことが窺い知ることができるとともに、その本気度に敬意を表します。東京が変われば、民間も変わります。期待を込めて、質問します。

 

 

条例改正の趣旨

 

<龍円>

今回提案されている学校職員の勤務時間と給与に関する条例改正案について、パートナーシップ制度関連の条例改正による変更点について分かりやすく教えてください

 

<都教委答弁内容>

今回の条例改正は、東京都パートナーシップ宣誓制度の趣旨を踏まえて、学校職員の勤務時間や手当制度等について、事実婚関係にある者を含む配偶者を対象とする制度に、パートナーシップ関係の相手方であって、同居し、かつ生計を一にしている者を追加するものである、具体的には扶養手当などの制度について、パートナーシップ関係にあるものについても認められることになる。

 

 

同居と同一生計

<龍円>

東京都パートナーシップ宣誓制度自体は、パートナーとして申請する際に、同居していることや、生計を一にしていることを求めていません。今回の条例改正案において「同居、かつ生計を一にしている」ことを要件としたのはなぜでしょうか?お伺いします

 

<都教委答弁内容>

パートナーシップ関係にあるものについても、法律婚などに求められる「同居かつ同一生計」という要件を求めているものである。

 

<龍円>

つまり結婚している夫婦や、事実婚カップルに求めているものと同じ要件を求めているということで理解いたしました。

 

東京都のパートナーシップ宣誓制度で、同居を求めていないのには、同居したくともの同居することができていないパートナーが多いという事実も踏まえています。東京都がこの制度開始に合わせて作成した啓発動画にも具体的な困難事例として出てきますが、同性同士で住宅を賃貸しようとしても審査が通らずなかなか住宅を貸してもらえないことが多いことや、同居することで二人がパートナー同士であることを第三者に知られてしまうこと避けるために別に住んでいるパートナーが多いのが現状です。

 

 

 

 

 

こういう困難さを減らしていくためにもパートナーシップ制度が創設されたわけですので、制度の普及とともに、同居したいと思うパートナー同士が同居できる東京になってほしいと願っています。

 

なお都教委においても、職員から申請したい旨の申し出があった時に、同居していなかった場合に、ルールだからと冷たくあしらわずに、こういう背景があることを理解して対応していただきますようお願いします。

 

 

 

子どもの扱いについて

<龍円>

さて、東京都パートナーシップ制度では、パートナーで育てている子どもについても登録することができるのが歓迎されている大きな特徴の一つです。

 

ファミリーとして登録が可能になったことで、保育所でのお迎え、学校でのPTAなどに参加するなど子どもに関わるいろんな場面で説明しやすくなり、また理解されやすくなる効果が期待されています。また子どもが病気や怪我などをした際にも、両パートナーが家族として付き添いや医療の意思決定に関わるなどができるようになるなど、重要な場面での活用も切望されています。

 

実際に東京では子育てするパートナーも徐々に増えていると聞きます。ただ出産したパートナーとお子さんとの間には法的な関係性があるのですが、もう一方のパートナーとは法的な親子関係がないことも多々あります。

 

そこで福利厚生において「子ども」の扱いについても確認いたします。

 

パートナーシップ制度で子どもを一緒に登録した職員で、そのお子さんが法律上はパートナー側のお子さんだった場合、超過勤務や深夜勤務をしなくてもよくなるのでしょうか?結婚や事実婚と同等の扱いになるのか、伺います。

 

<都教委の答弁>

法律婚や事実婚等と同様に、当該職員が、実子または養子であることも等を養育する場合に認められる。

 

<龍円>

結婚や事実婚であったとしても、実子または養子である場合に限られるということで、パートナーシップ制度で子どもとして登録していたとしても、実子または養子ではない子どもの場合は、超過勤務や深夜勤務を制限する対象にならないということでありました。

 

これを聞いて、なかなかハードルが高いなという印象を受けました。

 

例えば戸籍上は女性のままのトランスジェンダー男性と、女性のパートナーでお子さんを育てている場合で考えてみます。女性が出産した場合、トランスジェンダー男性と、お子さんの間には血縁関係はありません。親子として法的な関係を結ぶために、トランスジェンダー男性はお子さんと養子縁組を結び「養母」になる必要があります。現行の法律の中で割り切ってそうできる方もいると思いますが、そこに抵抗感を感じることもあるかと思います。またパートナー同士で養子縁組をしているケースも少なくないと聞いています。パートナーなのだけど、戸籍上は親子になっているわけです。そのパートナー同士で育てているお子さんを、さらに養子縁組するとなると、非常に複雑になってきます。それほど現状では家族になることの難しさがあるわけです。

 

そもそも、この制度は、結婚している夫婦でも、前のパートナーとの間のお子さんを連れて再婚して現在のパートナーとは養子縁組をしていない場合とか、事実婚で実の父親でも認知手続きをしていない場合なども対象外になるとのことです。「実際に子育てしている」という状況であっても、認められないケースがこれまでもあったことが考えられます。この点については、同性のパートナーであるかどうか以前に、「実際に子育てしている現状」に即した活用ができるように見直してくことも今後必要なのではないかと思います。

 

 

改正できなかった点

 

 

次に、今回の改正で、「結婚している夫婦」は利用できる制度で、パートナシップ制度を利用する職員がまだ利用できない制度はあるのでしょうか?お伺いします。

 

<都教委の答弁>

例えば、地方公務員法で対象者が規定されている配偶者同行休業のように、国が法令等により制限の対象者を具体的に規定している場合などについては、今回の見直しの対象にされていない。

 

<龍円>

国の法令による縛りがあるものについては、改正できなかったとのことです。国の方での議論が進むことを望みます。

 

 

その他の休暇制度など

 

 

Q今回の条例改正の他にも、いろいろな休暇制度があると思いますが、そのほかの制度に関してはどのような対応をしていくのか伺います。

 

<都教委の答弁>

運用開始に合わせて、慶弔休暇などの取得についても必要な規則改正などを行う。

 

<龍円>

今回の委員会に付託されているのは条例改正の部分だということですが、規則についても11月1日スタートを目指して改正するとのことでした。これらについてはまた別に機会に質疑させていただきたいと存じます。

 

さて今回の条例改正では、東京都のパートナーシップ制度利用者のみならず、都知事が認める自治体の制度利用者も対象にするとのことです。

 

 

まだどの自治体の制度が対象になるのかは公表されておりません。

 

子どもの扱いなどについても今回の(私の)質疑で明らかになりましたが、一般的には分かりにくい点でもあります。

 

ぜひパートナーのいるる職員が、上司にわざわざカミングアウトして(制度の詳細について)聞かなくても、どこの自治体の制度が利用できるのか、また制度の細かい点について理解できルよう、HP等で詳しく説明を掲載するなどの対応をしてくださいますようお願いいたします。

 

 

SOGIハラ・アウティング防止の徹底を

 

なおこの制度開始に合わせて、相談を受けた上司が誤ってSOGIハラ、つまり性自認や性的指向に関してハラスメントをしてしまったり、申請の過程でその職員の性自認や性的指向について職場で本人の同意を得ることなく知られてしまうようなアウティングといった被害が起きないように、対応についてはマニュアルを作るなどして、十分な配慮を行き届かせていただきたいです。

 

性的マイノリティの当事者は、生涯でたくさんの嫌な想いや辛い経験をされてきていることもあり、特にご自身にとっては逃げられない職場においては大変慎重になると思われます。制度を利用したいという思う当事者、が安心して利用できるように、SOGIハラの防止と、アウティング防止の徹底をして運用の開始をしていただけるようにお願いいたします。性的マイノリティの職員の皆様も、安心して自分らしく生き生きと仕事ができる職場づくりを進めてください。