東京都の同性パートナーがいる職員は、事実婚と同等の福利厚生が利用できない問題

LGBTをはじめとするセクシャルマイノリティの方々の中には、同性のパートナーがいらっしゃる方もおられます。(トランスジェンダーの方は、戸籍上は同性という場合があります)

 

これまで都議会でLGBT等のセクシャルマイノリティの皆様の困りごとが解決されていくように、様々な提案と要望をしてまいりまして、ありがたいことに2019年4月1日に通称「東京都人権尊重条例」(東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例)が施行され、東京都では性自認おより性的指向による差別が禁止されました。

 

それを受けて、2019年12月25日、東京都では全庁横断的に性自認や性的指向による差別や不都合を解消して、人権を尊重する取り組みを進める「東京都性自認及び性的指向に関する基本計画」を策定しました。

 

策定から1年が過ぎようとしていますが、現在、各部署で様々な取り組みが同時並行的に進められています。これまで結構細かくいろんな分野について、質疑をしてきたんです。病院で同性パートナーによる面会や立会いの、同性パートナーとの都営住宅入居、里親の基準、学校での配慮、若者の相談など、都民ファーストの会の仲間と手分けして色々な委員会で質問を重ね、前進したことも多々ありました。(都営住宅の入居だけまだ解決できていない)

 

ただ完全に見落としていました。ここまでやっているんだから、当然、自分たちのお膝下である東京都の職員の皆様については、福利厚生については当然平等に利用できるようになっているに違いないと思い込んでいました。

 

ですので、8月にこちらのニュースを見たときにはびっくりしました。

同性パートナー、待遇平等に 介護休暇や住宅 都対応に遅れ(東京新聞)

なんと東京都では、民間企業には「LGBTフレンドリーな取り組み」を推奨しているにも関わらず、東京都の職員は同性パートナーのいる職員については、事実婚のカップルと同等の福利厚生を受けることができないことが分かりました。

 

令和2年9月の都議会本会議で小池都知事「福利厚生制度見直し検討」

そのあとすぐに9月の都議会本会議の都民ファーストの会の代表質問で、この質問をしました。都知事がこの件について理解を示してくれた事で、見直しの検討が始まりました。その時の質問と答弁がこちら。

 

 

 

令和2年12月の都議会本会議に"介護休暇"取得の条例改正案

こちらの資料は、東京都教育委員会の条例改正の資料ですが、東京都職員全体についても同じ内容の改正案です。介護休暇の対象に「同一の世帯に属するもの」が追加されました。

 

・・・・。

 

はい。これだけでは、一体誰が含まれるのかよくわかりませんね。

 

「同一の世帯に属するもの」に同性パートナーは含むのか?

という事で、令和2年12月11日の文教委員会でこの件について質疑しました。

 

 私たち都民ファーストの会では、これまでLGBTをはじめとする性的マイノリティの方々の差別を解消するために会派をあげて取り組んできました。2019年4月には「性自認および性的指向による差別を禁止する東京都人権尊重条例」が施行され、同12月には基本計画が策定されました。私が以前こちらの文教委員会で要望した性的マイノリティの児童生徒が利用できるLINE相談が実現したことは、大変ありがたく評価しております。

 

 さて私自身スペシャルニーズ(障がい)のある子の親としてよく感じるのは、差別をする側にはしているという意識さえないことが多いということです。「それは差別ですよ」と伝えても「差別なんてしているつもりはない」と理解してもらえないことが多々あります。こちらは結構傷ついているのに、傷つけていることにさえ気づいてもらえないと、孤独な気持ちになり、時には希望を持ち続けることが難しいなーと感じることがあります。

 

 都教委の職員も含め、都の職員で同性のパートナーがいる方々が、事実婚に相当する福利厚生を受ける権利があるとして声をあげておられます。同じ東京都の職員でありながら、異性のパートナーとであれば受けられる福利厚生を、同性のパートナーとであると受けられないというのは、性自認及び性的指向による差別であります。都側は、きっと差別しているつもりさえないことと思いますが、自分の働いている組織から差別を受けている当事者の皆様は、とても悔しくやるせないものだと想像します。

 

 そもそも、この問題の根っこは、日本に、同性であっても、異性と同じように婚姻ができる制度がないことにあります。すでにG7の中で同性カップルの婚姻又はパートナシップ制度も持たない国は日本だけになっており、世界から大幅に遅れていることはとても残念なことです。

 

 しかし、国が動かないからといって、都が、職員に対して差別的な扱いを漫然と続けていいとは言えません。そんな中、先の第三定例会代表質問で「LGBT等の方々を初めとして、全ての職員が安心して働くことができるよう、都職員の福利厚生制度を一層整えていくべき」という私たちの会派の質問に対して、都知事から「職員一人一人の不安を解消して、性自認及び性的指向、育児や介護等の事情にかかわらず、これまで以上に生き生きと活躍できるような休暇等福利厚生制度の見直しを検討する」旨の答弁があったことは、大変評価いたします。

 

 都では、まだ処遇の見直しに向けて調査や検討をしている途中とのことですが、今回の条例改正案では「介護休暇」についてだけ、先出しする形になりました。条例改正の文言に、”同性パートナー”について表記がなかったこともあり、当事者からは「やっぱり自分達には使えない制度なのではないか」という不安の声が上がっています。

 

そこでまずお伺いします。

Q1.

 今回の条例改正により、介護休暇等の対象となる要介護者の範囲に追加する「同一の世帯に属する者」には、同性パートナーも含まれていること思いますが、見解を伺います。

 

【東京都教育委員会・人事企画担当部長】答弁内容

今回の条例改正により、介護休暇等の対象となる要介護者の範囲として拡大する「同一の世帯に属する者」とは、休暇取得しようする学校職員と、同一の住所で、かつ、生計をーにしている者となる。この要件を満たしていれば、介護が必要な同性パートナーについても、介護休暇等の対象となる

 

 

「同一の住所で、かつ、生計を一つにしている者」という要件を満たしていれば、同性パートナーについても対象になるとのことでした。

 

 同性パートナーがいる方々は、様々な理由から、住民票上では同じ世帯にしていないことが多いと伺っております。条例改正案では「同一の世帯に属する者」という言葉がポンと特段の説明なく出てきたこともありまして、住民票上で同じ世帯に属していることを要件とされているのではないかという風に読み取れてしまい、ほとんどの同性パートナーが実際は利用できないのではないかと、懸念されています。

 

 また同性パートナーの方々は、婚姻制度がまだ整備されていないことや、東京都として同性パートナーシップ制度を実施できていないこともあり、なかなか自分たちの関係性を客観的に証明するようなものがありません。しかしながら、お互いに大切に想い合い、カップルとして、パートナーとして、かけがえのない家族として、助け合いながら共に人生を歩んでいるのは、ごく普通の結婚をしている夫婦と変わりがありません。パートナーが介護を必要としているときに、離職をすることなく介護休暇が取得できることは、とても重要なことです。

 

 そこで、同性パートナーのいる学校職員が介護休暇を申請する際に、この書類とこの書類がなかったらダメだというように要件をあらかじめ定めて、それを満たさなければ休暇を取得させないという運用をせずに、職員の話をよく聞いていただいて、どういう書類があれば関係性を証明できるか話し合いながら、一つの書類では関係性が証明しにくいのであれば複数を組み合わせるような形で、柔軟な対応をしていただきたいと思います。

 

そこであらためて伺います。

 

Q2

同性パートナーのいる学校職員のいらっしゃる方が、同性パートナーのために介護休暇を取得する場合、どのようにして同性パートナーが「同一の世帯に属しているか」を確認するのか、お伺いします。

 

【東京都教育委員会・人事企画担当部長】答弁

「同一の世帯に属する者」であることの確認については、住民票や公正証書、またはその他の書類により、同一の住所で、かつ、生計を一にしていることを総合的な観点で確認することを想定している。なお、必ずしも住民票上の同一世帯であることまで求めるものではない。

 

 

「必ずしも住民票上の同一世帯であることを求めるものではない」ということと、「総合的な観点で判断する」という答弁がありましたので、柔軟に対応をするということが確認できました。

 

ただ、同性パートナーのために介護休暇を取得する場合、その学校職員にとっては、その申請をすること自体が上司に対して初めてご自身の性的指向や性自認についてカミングアウトすることになるケースになることが多いと思います。その職員にとっては、とても悩んだ上で、勇気を出して申請をなさる可能性があります。それに対して、上司の方がどのように対応するべきなのか、よく理解していないと、不用意にその職員を傷つけたり、人権を侵害してしまうような言動をとってしまう危険性があります。例えば、どう対応をとったらいいのか分からないため、他の職員に不用意に相談してしまったことによって、本人の意思に反してその職員の性的指向や性自認に関してアウティングしてしまう事態になることもあり得ます。また、皆さまの大切な配偶者が介護を必要としているのだとお話をする時と同じように、大切なパートナーが介護を必要としていらっしゃるのだということを、しっかりと受け止めて誠実に対応をせず、ただの同居人のような扱いをしてしまうことで、その職員の尊厳を傷つける可能性もありえます。

 

 

Q3

この制度を活用していくためには、管理職をはじめとして教職員が今回の改正内容をよく理解することと、同性パートナーのいる職員から申請があった場合に、人権を尊重する対応が取れるようにしておくことが必要と考えるが、そのためにどのような取組を行うのか伺います。

 

【東京都教育委員会・人事企画担当部長】

今回の改正内容を区市町村教育委員会や学校に通知する際には、介護休暇等の対象となる要介護者の範囲拡大について、わかりやすく説明した教職員向けの資料を作成して送付するなど、十分な周知を行っていく。

 

改正内容をわかりやすく説明した資料を作成して区市町村教育委員会に周知を図っていくとのことでした。

 

ここで一つ要望があるのですが、その資料に明確に「同性パートナーについても対象に含む」ということをわかりやすく書き込んでいただけないでしょうか?

 

 性的マイノリティの教職員の方々は、学校ではご自身の性的指向や性自認についてカミングアウトしていないことが大多数だと思われます。今回、処遇改善のために声をあげた都立高校の教員の方にもお話をお伺いしましたが、「とても学校でカミングアウトできるような雰囲気にはない」とのことです。もし条例改正の資料を読んでも、同性パートナーが含まれるのかどうか分かりにくい表現で書かれていたら、その制度を利用できるのかどうかを上司に相談するためだけにカミングアウトしなくてはならないということになり、かなりハードルが高いものになります。たとえ、ご自身が利用できるということを予め知っていたとしても、それでもなお申請とともにカミングアウトしなくてはならないこともあり、申請することを躊躇う教職員が多いと思います。だからこそ、その資料に同性パートナーについても利用できることがはっきりと明記しておいて欲しいと思います。そうすることで、まず相談するためだけにカミングアウトする必要がなくなりますし、当事者の教職員にとっては「私たちの存在が認められている」と感じることでカミングアウトすることになったとしても申請する勇気をだす後押しになると思うからです。どうか通達資料には、わかりやすく「同性パートナーも対象になる」ことを明確に記していただけますようお願い申し上げます。

 

 また、先ほど上司の方の対応によっては、尊厳を傷つけ、人権侵害をしてしまう可能性があるとお話ししましたが、都(総務局人権部)では「職員のための性自認及び性的指向に関するハンドブック」を作成し、今年の夏から秋にかけて、都内の各中学校と高校に10-20冊ずつ程度配布しております。残念ながら小学校には届いていないようなのですが、ハンドブックは総務局の「人権のとびら」というホームページにpdfが公開されています。この条例改正の資料には、対応する管理職の方にはマニュアルをしっかりと読み、理解しておくことが必要であることも記載していただくようお願いいたします。また、残念ながらこちらのマニュアルについて、まだ教職員には存在があることさえ知られていない学校もあると伺っております。これを機に、このマニュアルについてもすべての教職員が読むように徹底していただくよう、要望させていただきます。

 

 

 総務局によりますと、同性パートナーがいらっしゃる職員への福利厚生を改善していく検討の最中でありながら、介護休暇の条例だけ先に改正したのには、中途退職した職員の「退職理由」を全庁的にあらためて調べたところ「介護離職」が想像よりもはるかに多かったことから、急いで改正する必要があるとの認識からであるとのことでした。(転職以外の理由では「介護」が最も多かった)

 

 私もコロナ自粛中に父親の介護をする母を手伝いましたが、食べる、排泄する、寝る等の介護は、待った無しで、1日だって放っておくことができないものです。自分しか介護する人がいない場合、即介護離職に追い込まれ、生活困窮につながるシビアな問題です。そういう意味では、同性パートナーのいらっしゃる職員の福利厚生について検討や調査が終了するのを待たずに、同性パートナーのいらっしゃる職員も利用できるような形で介護休暇について改正をしたことは評価できます。

 

 ただ、同性パートナーのいらっしゃる職員からすると、パートナーとの関係性を、事実婚と同等の関係性であることを認め、他の職員の皆様と平等に福利厚生を利用できるようになることこそが、差別の解消であり、権利を尊重されることになります。それが実現してこそ、性的マイノリティの職員の皆様が、自分の職場に誇りを持ち、輝きながら仕事をすることができる職場環境が整っていくことと思います。

 

また、性的マイノリティの教職員が生き生き働ける職場環境を育てることは、同時に学校で学ぶ性的マイノリティの児童生徒に対する配慮を行き渡らせるとともに、差別を排除し、人権を尊重する次の世代を育てていくことにもなります。その意味で、引き続き、性的マイノリティの教職員が働きやすい職場環境を育ててくれますよう要望いたします。

 

 最後に、総務局人事担当者とお話をしておりますと、同性パートナーのいらっしゃる職員について、どのように確認を取るかというところに苦心されているようです。パートナーシップ証明や宣言がある自治体に住んでいる方と、ない自治体に住んでいる方がおりますし、公正証書の提出を求めるとしたらその費用の負担に不公平があります。となると、やはりこういう観点からも、東京都においてパートナーシップ条例を定める必要性があると感じており、今後、私は都におけるパートナーシップ制度を実現するべく取り組んでいくことを宣言して質疑を終えます。

 

◼️東京都の介護休暇の改正についてわかった事◼️

●要介護者の対象に同性パートナーは含まれる

●確認方法は、住民票である必要はなく、柔軟に対応する

●現場の管理職や職員に改正を周知するため、わかりやすく解説した資料を配布する予定

 

◼️東京都教育委員会に要望した事◼️

●職員の話をよく聞いて、どういう書類があれば関係性を証明できるか話し合いながら、一つの書類では関係性が証明しにくいのであれば複数を組み合わせるような形で、柔軟な対応をしていただきたい

●条例改正を説明する資料に「要介護者の対象に同性パートナーを含む」ということを明確に記載して欲しい

●同性パートナーがいる職員からの申請を受ける管理職は「職員のための性自認及び性的指向に関するハンドブック」を必ず読んで対応することを徹底して欲しい

 

同性パートナーについて事実婚と同等の福利厚生へと改善されるよう、引き続き取り組みます

今回の改正が、同性パートナーのいらっしゃる職員の方々が求めていることに対しては、まったく十分に答える内容ではないことは理解しております。(一方で、今回の条例改正は、新型コロナの影響もあり自宅で介護する必要が生じたり、介護離職を避けるために急いだ東京都の事情も理解できます)

 

引き続き、同性パートナーについて事実婚と平等の福利厚生の対象となるよう働きかけを続けてまいります。

 

そしてその福利厚生の改善を通して、都庁全体でのセクシャルマイノリティに関する理解が深まり、当事者の職員が自分らしく生き生き働き、ご自分の職場に誇りを感じられるような東京都になって欲しいです。