最近、安価なチェーン店のメガネを新調したのです。

 

悪く言うつもりはなくて、実際、よくできていて。

 

メガネを購入し始めた当時、3〜4万円支払っていたのが、5,000円くらいで購入できるヤバさに打ち震えていたりします。

 

いい時代になったのか。

はたまた悪い時代になったのか。

ちょっと言及が難しいです。

 

 

 

 

 

それはさておき。

 

レンズを選ぶにあたって、必ずメガネ屋さんに「食い気味に」お伝えする一言があります。

 

「ブルーライトカットレンズが今なら『いやいらないです』」

 

いらないんです。ブルーライトカット。

営業トークに、かぶせてでも止めます。ブルーライトカット。

 

メガネをかけたときと、裸眼のときを見比べてみて。

白い紙の色が違って見えたらアウト、という判断をしています。

 

見た目で5%の色変化があったら切り捨てる。

それがぼくの判断基準です。

 

下手したら10%くらい違って見えるおそれがあって。

 

5%とか10%というのは、プロセスカラーの色見本帳での5%とか10%のことで。

 

普通に見ている世界がシアン-10%であるなら。(単純にブルーをカットと考えたら)

 

それは自分にとって正しくない色です。

 

ブルーライトカットということは、青色を減少するフィルターをかけているのと同じで、もしもその色が普通になってしまったなら、自分の見ている世界は一般的な人とは異なってしまうことになります。

 

これが味覚なら、塩分−10%の味覚で暮らしているのと同じ。

音楽なら、周波数が-10%で暮らしているのと同じなんです。

たとえば、ラは440Hzですが、10%減は396Hz。

 

同時に音を出して聴き比べたら正直言ってキモいです。

 

基準の音が440Hzとするなら、ズレが激しいと言わざるをえない狂いです。

440Hzを知らずに聞くぶんにはいいのですが、基準を決めた瞬間、それズレになるんですね。

 

実際にブルーライトカットレンズを購入された人のお話では、イエローが強いとか、アンバーが強いとか、赤っぽいとか、そんな感じみたいです。

 

ということはデフォルトでイエロー+10%、マゼンタ+5%増みたいな世界ってことですよ。メガネをかけた瞬間にY10%、M5%が掛けられた世界で色を見ろって言われて無理です。

 

脳内補正できる人はできるんですよ。でも、だいたいの人はそんなことできません。

もちろんぼくもできません。

 

確かにブルー系の色を抑えるのはイエロー系なんです。

 

カメラをやってる人ならピンとくるかもしれません。特にフィルムで撮影されている方は経験があると思うのですが、何かの色を抑えるためには補色を使うんです。

 

Photoshopでシミュレーションしてみましょう。

 

特にぼくが手っ取り早く手に入るという理由で使ってる「アイランプ」はだいたい3000ケルビンくらいなんですが、その設定で撮影した翌日とかにカメラを持ち出して日中の街を撮ったりるとすごく青く写ります。

 

こんな感じです。

 

 

チョー青いですね。

いい感じの世界観ではありますが、写真としては間違ってます。

 

これをPhotoshopの「レンズフィルター」で修正してみましょう。

違いがわかるように右半分だけやってみます。

 

 

イエローオレンジのフィルターをかけると、まあまあ違和感のない色になりました。

青を減らすためにイエローオレンジを追加したという形になってます。

 

つまり、青色を抑えるためには、上記の画像のような「濃いイエロー系の色眼鏡」をかける必要があるってことなんです。それもわりと強めの色眼鏡です。

 

Photoshopの例では、フィルターを74%もかけてブルーを抑えてるわけでして、こんなのデザインに適している補正とは言えないんですよね。

 

とはいえ、上記の例は極端すぎます。

極端すぎるんだけども、校正が狂った状態で見たものがちゃんと流通できるわけがないんですよね。

 

実際、デザインするものが +Y10% +M5%で見えてるとしたら狂いすぎています。

印刷現場で「濃度が10%違う」というのは、「ちょっと違う」ではなくて「全く違う」と言われます。

 

そんな10 %の差を許容する人に、はたしてちゃんと仕事ができるんだろうか? という疑問は普通に湧いて出ます。

 

アナログの仕事をしていた人は白と黒だけで絵のもとを作ってきたのですが、今の時代、プレビューなしで仕事する人はいないと思います。つまり、フルカラーで表示して作業してる。

 

それが10%狂ってるというのは、全部が狂ってるのと同じ、という評価になるんです。

 

ですからブルーライトカットメガネは功罪でいうと罪しかないという印象です。(ただしデザイナーに限る)

 

レンズの特性上、「色が変わらないメガネっていうのはあり得ない」んですが、できる限り変化が少ないものを選ぶのは至上命題だと思ってまして。

そういう理由で、ぼくは色メガネをかけません。

 

ファッション性が強くても。

かっこよく、おしゃれに見られるとしても。

オレンジとかピンクとかブルーとか、そんな色がついているメガネはかけないようにしています。

 

塩味がいつも-10%とか。

砂糖味がいつも+10%とか。

辛味がいつも+20%とか。

建築なら、水平な床ではなくて、10%傾いた床を作りつづける業者、みたいな話。

 

新築の建物にビー玉置いたら必ず転がる。

そんな家、数千万円払って買うわけがなくて。

 

そんなのが平常であるなんて、自分の感覚を殺すのと同じだと思うわけです。

 

だから変な色のファッションアイウェアをつけている業界関係者を(控えめに言って)軽蔑しています。それでも基準の色が認識できるのであれば逆に尊敬します。

 

あんたマジでスゲーなって。

 

デザイナーでなければ別にどうでもいい話です。でも、その世界で生きるのであれば、基準が狂わないようにするのは当然。

 

デザインの世界の「絶対音感」を持っていないと自覚する自分だから、そこだけはちゃんと線を引いておきたいと思うのです。

 

2022年3月15日追記

追加エントリーも投稿しました。

 

ブルーライトカットレンズを選ばない代わりに何をするか?

 

 

2024年4月9日追記

 

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