最近ね?

 

デザイナーが出したカンプをAIに食わせて、こうしてほしい的なプロンプトで吐き出されたものを「フィードバック」として返されて

 

「クライアントが(または上司が)、AIに食わせた内容を出して『修正お願いします』って言われたー、もうやってられない」

 

みたいなお話がSNS上に出てくるようになってきました。

 

生成AIによって改訂されたものを修正指示として出してくる。

この振る舞いのおかげで病む人、心が折れる人、かなりいます。

 

これって、すごく悪手で。

 

「じゃあ、そこから先はAIにやってもらったらいいんじゃないですか?」って思って、可能な限りその仕事から離れたくなるんですよ。

 

いままでやってた仕事を、外部の他の「能力がわからないデザイナー」が見て、手を入れて、修正指示を出してきたのと同じことなんで。

 

で「〇〇さんに見てもらいましたー、修正よろしくですー」ってなったら軽く呪います(笑)

 

〇〇さんって誰やねん(ピキ)ってなる。

100%なる。

 

その外部デザイナーが「監修」として契約されていたら納得します。

トーン・アンド・マナーの統一を目指しているんだなとか、ブランディングに力を入れてるんだな、とか。

ものすごく思うんです。

ディレクションする人がちゃんと存在している。

だから理路整然とした修正指示が飛んできた。

なるほど、それはそうだね。

 

ってなるんです。

 

だけど。

 

それが通りすがりの自称デザイナーだったら?

 

平成までの商習慣だと、即縁切りになる所業です。

ならウチは手を引きますから、今後はそっちに頼んでもろて、っていうやつです。

 

ホント、あれはたまらんなーと思います、ええ。

 

あんな感じの修正指示は、今後、自分のところにもガンガン届くと思います。

人の心とかないんか、と作業しながら血の涙を流すと思います。

 

ここから先はAIにやってもらったらいいんじゃないっすか?

これまでの作業代だけいただいていいっすか?

 

ってなるよなー。

 

 

生成AIは品質が低い

何度か書いてますが、生成AIのデザインはクォリティがアレでして。

 

写真やイラストは世界中の成果物からパクられてますから、やたら初見での品質はいいように見えるんです。(指が6本以上あるとか、右手が2本あるとか、校正はめちゃ大変)

 

だけど構成やディテールは初心者なんです。

AIにも気づかれていないテクニックが(いまのところは)いくつもあるのです。

 

(デザイン的な意味で)見た目可愛いのに枝毛がすごーい、みたいなことをあちこちで見つけてしまいます。

 

で「あー、そこに手を入れるなら、もっと根本的なところからやり直さないとダメだなあ」という感想を持ちます。

 

ホント、見た目だけはきれいだけど、明らかに我々よりも劣るものが「ぼくのかんがえたさいきょうのでざいん」という顔で登場してくるように見えてるんですよ。

 

中学生くらいの知識で、やたら絵だけ上手い感じのものが出てくる。

 

常識的に考えて、勘違い中学生は我々の発注者にはならないじゃないですか。

クライアントが企業なら、大学出てる「いい大人」が発注者です。

 

ターゲットが中学生で、中学生の視点で考えたレビューならお茶菓子持参で聞きにいきます。

リアル中学生ですらないやつのレビューに、なんか価値あんの?

ってなるのが一般的な感覚だと思うんですよね。

 

最近ね、AIでランディングページ作るアカウントが、 AIを絶賛してまして。

「初稿にリテイク出したらいい感じに進化しましたー」的なポストを上げられていたんですが、リテイク後のほうが劣化してました。

 

まあデザイン関係者からは非難轟々なんですけれど、そんなことで引っ込むインフルエンサーじゃないわけでして。

そのまま突き進むんだろうなあと思ったりしまして。

 

ああいうのこそクライアントの敵なんだけど、クライアント側はキラキラ度合いに賛同されるんですよね。

そのキラキラをまんま背負ってこちらに口出しされたら、全ての業務から手を引きたいです。

 

ディレクション能力が劇的に低すぎるキラキラさんは、じつに厄介な存在です。

すごい人はちゃんとディレクションしてくださるんです。

ディレクターは生成AIでも品質がすごく向上するんですよね。

 

顧客はAI大喜利を求めるわけじゃありませんから、自画自賛AIデザイン醸成はホント毒でしかありません。

 

 

 

AIの回答は疑うべき

あらためて申し上げますが、AIの回答はとことん追求しないと、だいたいハズレです。


AIが吐き出した初稿だけ見て「ああ、なるほど」と思ってしまったら大怪我します。

 

何度も質問→回答→再質問→回答→再質問→回答→再質問と繰り返して、見落としがないかキッチリ詰めないと間違ったものが出てきます。

 

最近つくった電子部品は、

2週間くらいかけてやりとりしつつ

試作して

動作チェックして

ダメなところを検証して

試作して

動作チェックして

ダメなところを検証して

......を繰り返して。

さらに本当にそれで大丈夫か検証をして。

(ここで初めて懸念を出してきたりする)

 

そこでまた、世の中の事例を集め直して。

 

集めた事例と、作ったものとを再精査して。

 

さらにその部品関係の基礎知識を再確認して。

 

結果、それは使えなくないけれど規格からは少し逸脱することがわかって。

 

正しく動かすための部品が不足していることもわかって。

 

1ヶ月半くらいかけて、ようやく問題なさそうなものが作れるというところまできました。

 

だらだら書きましたけれども、要点としては「AIの初稿は間違いが多い(確率が高い)」です。

 

AIは情報の後出しが多いんですよね。

 

そんな必要情報は最初に言えよAIって思うかもしれませんが、

それはAIが「キミはある程度わかってるよね?」という扱いをしてくるんで、出てこないんですよ。

 

言い方を換えると、質問者を買い被っている。

 

「前提としてわかってるはずのこと」を、実はこちらが知らなかった。

それが判明した時に、ようやく注釈を入れてきます。

 

こちらはそんな対応を見て「しらんがな」となって、

お互いに初めて出てきた情報を調べ始める流れが生まれます。

 

ですので「ちゃんと使えるレベルの情報」になるまで、ものすごく時間がかかるんですよ。

裏付けと深掘りが必要なの。校閲レベルの大変さがある。

 

デザインをよく知らない人がAIの初稿を見て「いいじゃん」と思われたとき、上記のような「本当は不足しているものがある」にもかかわらずスルーされている確率はかなり高い。

 

そんなふうに感じているわけです、我々は。

 

 

AIに食わせたかどうかは、わりとすぐわかる

そういうわけで、ぼくらがAIを介したフィードバックを見た瞬間、

それが熟考されたものか、そうじゃないのかに気づいてしまいます。

 

初見で気づくと思います。

足りないんです、いろいろな技術が。

入りすぎなんです、余計な要素が。

 

AIに食わせるぐらいなら、何が気に入らないのかをガンガン言ってもらった方がすごくよくて。

なぜかというと、デザインは要素を切り捨ててから構築するものだから。

 

「あちらを立てればこちらが立たず」って言葉があるじゃないですか。

 

AIは馬鹿正直に文句も言わずに、要望は全部入れてくれるんですよ。

 

「じゃあそれでいいじゃない?」

 

と思う方は最初からデザイナーに発注せず、全部AIで完結していただいたほうがいいと思います。

それで経費が浮くならいいじゃないですか。

 

AIに対してとことん表現の矛盾を指摘できる人なら、たぶんすごくお仕事がいいほうに進むと思います。

 

中途半端な発注はされないわけですから、デザイナー的にも助かります。

 

むしろデザイナーは「スーパーバイザー」とか「メンター」的に発注していただくほうが、いろいろといいんじゃないかなあ。

 

 

なんでもアリは、なんにもないのと同じ。

AIは全部盛りを出してきます。

 

ですがそれは、より多くの人たちに伝わっても、誰ひとり刺さらない。

 

表現の強さと情報の精密さがないから。

 

たとえば、十徳ナイフってあるじゃないですか。あ、ご存知ない方は読み飛ばしていただいて結構です。

 

あれについてる道具、全部は使わないですよね。

なんなら外したい道具だってありますよね。

 

なんでもできる道具、なんでもできる人は、専用道具や専門の人に敵わない。

 

だから万能なモノになりたければ、めちゃくちゃ基礎能力を上げないと誰にも太刀打ちできない。

 

これが重要な基礎知識です。

 

だからデザイナーは優先順位を決めて、要素を削って、訴求内容の「見せ方」を考えます。

 

ですがAIは全部入れてきます。

刺さる表現はどんどんマイルドになっていきます。

 

でもビジュアルだけはなんかめっちゃキレイ。

 

 

生成AIを使って修正指示を入れると、デザイナーは病む

病みます。

 

自分よりレベルの低いものをもってこられる辛さ。

 

しかもキミの存在価値は「代わりがいる」くらいのものだよ、という感じで投げてこられる。

デザイナー(あえてクリエイターとは言いません)は心を病みます。

 

機械で出したやつを参考にしてね、って。

根拠もロジックもなしに、要望を詰め込んだものが飛んできます。

 

そしたらもう考えるのはやめて、出てきたレイアウトを印刷用に(ウェブ用に)調整して印刷屋さんに渡すかなー。

 

そりゃ廃業しようってなるわけで。

自分たちがやる意味、ありませんからね。

 

別にAIを使わないでって言てるんじゃないんです。

AIに食わせてまでやりたかったことを、AI成果物から読み解かせるのではなく、ご自身の口で説明してほしいんです。ガッツリと。

 

そこを力抜いてしまったら、熱量は誰にも届かないんですよ。顧客にも伝わらない。

発注者の、強い思いが知りたい。

 

それがまったくなくて「これでお願いします」と言われたら、もういいですって言うと思います。作業費もらって撤退します。

 

ぼくらの業界は契約書を結ぶことが少ないですけれども、

今後は「AIに食わせたらそこで取引を終了します」という条項が

入れられるかもしれません。

 

そんな感じで

AIを使うとデザイナーが病む。

病んだら廃業する。

というお話でした。

 

極論に見えるかもしれませんけれど、これからより一層、病む人は増えると思います。

 

生成AIの濫用で仕事がなくなるというのは、まだもうちょっと時間がかかるんです。

それは主に品質の問題と、印刷用フィニッシュワークのノウハウをご存知ない方々が、結局誰かに頼るだろうと想定されるためです。

 

前者はお金次第。

後者は印刷屋さんが回収するのかなー、という展望。

 

それよりもキツいのは、メンタル面ではないかと思っているんです。

ガックリくるんですよね。

 

健康で参りましょう。