夢列伝ブログ|新潟の食を求めて、全国からお客様が訪れる街へ ――「新潟維心会」が人を動かす | 日本を元気にする電子ビジネスマガジン『夢列伝』 ブログ

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 「居酒屋甲子園」という活動がある。これは居酒屋業界を活性化することを目的として「共に学び、共に成長し、共に勝つ」を理念とする全国規模のものだ。これを象徴するものは「居酒屋日本一」を決める大会で2006年2月に第1回が開催され、2017年で第12回となった。エントリーは居酒屋を中心とした業態で、第1回は236チームであったが、第12回は1756チームと7倍以上に増えている。居酒屋日本一が決まるまでは地区レベルで覆面調査によるチェックが4回行われ、地区大会、面談と進み、横浜パシフィコの国立大ホールでファイナリストとしてチームの取り組みを披露する。

 

 このプレゼンテーションの内容は、当初は自店の成り立ちについて感動的に表現していたが、回を重ねる過程で、リピーターのつくり方、地域社会とのかかわり方、人材採用と育成の仕組みという具合に、今日の飲食業が直面する課題に取り組んでいることが詳細に語られて、学びの要素が一層充実してきている。

 

 このように回を重ねる中で、第10回と第11回の2回連続で新潟のチームが日本一を獲得した。ずばり「新潟は元気」である。居酒屋日本一を獲得しようする情熱の背景にどのようなものが存在するのだろうか。

 

 ここで、居酒屋日本一となったそれぞれのチームの発表内容を簡単に紹介しよう。

 

 まず、第10回。この日本一のチームは「燕三条イタリアンBit」、新潟市中央区にあるイタリアンである。同店のオーナーシェフである秋山武士氏は工芸品の名産地である燕三条の出身で、これらの伝統の技をリスペクトして、レストランの運営に取り入れている。これによって醸し出す飲食の奥深さがお客さまから高く評価されている。

 

 

 

 

 続く第11回。ここでは「旬海佳肴一家」(しゅんかいかこういちや)が日本一となった。Bitと同じ新潟市中央区の新潟駅近くで営業している。「寿司居酒屋」をコンセプトしていて、お客さまに新潟の豊富な食を体感してもらうために鮮魚、水、米、酒という新潟ならではの食の価値を、卓越した料理と日本酒とのマッチングなどで真摯に伝えている。

 

 このように二つのチームは地元が持つ伝統や文化を自店の飲食店経営に最大限に取り入れて、地元愛に満ちている。それが繁盛店となっている要因であり、日本一を決める会場で聴衆からの共感を獲得することができたのである。

 

 

活動の端緒「ゴミ拾い」が

交流のすそ野を広げ、全国規模に

 これらの原点は「新潟維心会」である。維心会は新潟県内で飲食店など食の仕事に携わる人々が集まり2011年2月に発足した。理事長は居酒屋甲子園第11回の日本一となった一家グループ代表の品田裕志氏(1971年生まれ)である。

 

 そのミッションは「新潟を食でお客様を呼べるまちに!」「食からの地域活性をしよう!」「新潟の食材の素晴らしさを日本全国に自慢したい」というものだ。このきっかけとなったのはグルメサイトの営業マンの発案からであったが、たちまちにして新潟県内の飲食業経営者が十数名集まった。結成当初は食事をしながらそれぞれの課題解決や夢を語り合うものであったが、同年3月に開催した「ゴミゼロプロジェクト」が具体的な活動の端緒となった。これは新潟県下の7拠点で一斉にゴミ拾いを行うというものだ。ゴミ拾いにしたのは、「誰かが目立つわけでなく、誰も得をしないから。そして、町に恩返しをすることができる」(品田氏)という理由からだ。

 

「われわれだけで経営の話だけをしていても発展性がない。皆で心を一つにする活動をしよう」

 

 このように呼び掛けた品田氏であるが、これにそれぞれの従業員が参加し、会社等を超えたチーム編成を行うことで参加者のコミュニケーションが活性化していった。お互いの悩みを共有し、意見交換をして、解決のアドバイスをするようになり、強いつながりができた。「ゴミを拾って街をきれいにしながら、自分たちの心もきれいになっていく」――このようなことを話し合った。

 

 

 すると居酒屋甲子園がこの活動に注目して、全国規模で5月30日12時から14時まで一斉にゴミ拾いを行うプロジェクトとなった。

 

 新潟維心会が交流を重ねている過程で、メンバーが増えていないにも関わらずメンバーの飲食店の総数が当初20店舗であったものが、いつの間にか60店舗を超えるようになった。新潟を元気にしようという思いが新規出店に結びついていったのである。また、来店したお客さまをほかのメンバーの店に紹介するなど相互送客するようになり、お互いがますます活性化していった。

 

 

東日本大震災後の支援活動の縁で

南三陸との交流が活発化

 この年、東日本大震災が起きた。新潟維心会メンバーは「この時こそ、自分たちで動こう」と立ち上がり、さまざまな業種の有志も加わり石巻方面に支援に赴いた。そこから南三陸町に入った。ここで炊き出しや風呂のサービスなどを行った。この過程で地元の生産者と交流を深めることになった。

 

 南三陸町は旧の志津川町、歌津町、入谷村、戸倉村が合併してできた行政区で、食材が豊富であった。この中で特に志津川のタコが名産であった。「東の志津川、西の明石」と並び称されるという。

 

 そこで、新潟維心会が志津川のタコを使用したB級グルメの商品開発を行った。これはタコ飯のコロッケで「たこコロ」と名付けた。志津川の郷土料理にタコ飯があり、これをそのまま広めるのではなく、イベントや露店で提供できるように、タコ飯をホタテの出汁を用いて炊き、ライスコロッケにし、最後に甘辛いタレをくぐらせる新潟の文化もプラスして仕上げるというものだ。

 

 新潟維心会では2011年に地元で行われた復興市でたこコロを販売した。新潟維心会の店舗に集まった募金を全部仕入に充てて、それを3倍の金額にして、全て志津川地区に寄贈した。交通費は自腹である。この活動内容を品田氏は自身のブログで発信した。これらの活動は南三陸、新潟共によく知られるようになり、他業界の支援活動にも広がった。

 

 

新潟の食材を組み合わせた

B級グルメの特産品を続々開発

 新潟維心会では新潟県の食品流通課から「新潟県がもっと米粉を推していきたいということから、米粉を使用した、分かりやすくとっつきやすい商品を開発してほしい」と要請されて、この商品開発に取り組んだ。

 

 そこで新潟の名産品となるようなB級グルメを開発した。「新潟の鶏、豚、牛を素材にして、つなぎにコシヒカリ、臭みを消すために吟醸酒を使用して、メンチカツにして最後に甘辛いタレをくぐらせる」というものだ。商品名は「新潟たれ唐吟醸仕込み」。米粉は油を吸わないので、唐揚げでも食味がさっぱりしている。酒のつまみとしても重宝される商品となった。また、米粉はアレルギーフリー、グルテンフリーであることから世界的な広がりが期待できる。

 

 これを新潟県が認めてくれることとなり、この開発費を新潟県が負担してくれた。これは後に新潟県のオフィシャルの商品「新潟県推奨事業商品」となった。

 

 これらがきっかけとなり、キャンペーン用の新商品づくりを依頼されるようになった。先の畜産品を活用した「三味ぎっしり肉みそおにぎり」「三味ぎっしり新潟カレー」など、JAなどが協力してより地に足のついた商品となった。

 

 

 さて、居酒屋甲子園4代目理事長の山根浩揮氏が発起人となり「居酒屋大サーカス」が始まった。これは全国47都道府県が、それぞれの名産を持ち寄って開催地の人々に呼び掛けようというもの。第1回は2014年熊本で開催された。

 

 居酒屋大サーカスは2016年、第3回を新潟で開催することになった。新潟で居酒屋大サーカスの開催が決まってから、品田氏はじめ新潟維心会のメンバーは資金集めに動いた。「これは47年間に1回のイベントで、新潟にたくさんの人が集まり、新潟の魅力が全国に広まる。2日間新潟を夢の国にする」――このようなことをうたい文句として、多くの人々から理解を得ることができた。このイベントは新潟市内の中心部、万代シティで2日間開催、8万9000人を集めるという大盛況であった。

 

 さらに、大阪での新潟のアンテナショップのプロデュースを担当、ニューヨークとロサンゼルスで、新潟食材をアピールするイベントを行った。

 

 そして、2年連続居酒屋日本一と続く。このような動向が全国の居酒屋関係者に知れ渡るようになり、これらの秘訣を学ぶために全国から訪れるようになった。そこで新潟維心会をきっかけとした関係者たちは、あらためて新潟を食で全国に発信するミッションをブラッシュアップさせている。

 

この記事を書いた人
『夢列伝』編集長 千葉哲幸

 

外食記者歴35年。2017年4月エーアイ出版夢列伝』編集長に就任し、夢を語り、それを実現するために行動し、日本を元気にする人に出会うべく東奔西走。

 

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