こんにちは、値上げの専門家(中小企業診断士)の伊丹芳則です。
日本は約30年、物価が上がらずにいます。
直近の物価上昇率は、0.1%です。
これに比べ、欧米の物価上昇率は、4~6%とインフレ傾向になっています。
欧米のインフレ傾向の原因は、次の通りです。
◆石油高
◆原材料の高騰
◆輸送料の上昇
◆物流の混乱
などで、特に、『輸入コストの上昇』によるものが大きいでしょう。
これは、『コストアップによるインフレ』につながります。
だから、欧米ではインフレ傾向になっているのです。
しかし、この流れは、何も欧米だけのものではありません。
日本も同じ条件です。
では、なぜ日本の物価は上がらないのでしょうか?
色々と原因はあるでしょうが、一番の原因は、『低賃金』にあると考えています。
だから、例え、『輸入コストの上昇』があったとしても、これを『賃金のコストダウン』で補おうとするのです。
それが、『非正規雇用の増加』として表れています。
今や、『非正規雇用』の割合が、全体の約4割です。
この流れを示すグラフが、下の欧米と比較した、『日本の賃金は伸び悩んできた』のグラフになります。
このグラフを診ると日本は、1990年を100とすると、2020年もほぼ横ばいの約100です。
しかし、欧州は、約200と、倍になっています。
米国に至っては、約250と、2.5倍になっているのです。
このように、日本だけ『低賃金』が続いていてます。
『低賃金』で、お金に余力がなくなるため、どうしても『低消費』になってしまうのです。
これは、お金に余力がある場合でも、『老後の不安』から、『低消費』になる傾向があるでしょう。
これを示したのが、下の米国と比べた『日米の家計の金融資産の構成』のグラフになります。
このグラフから日本は、老後の蓄えとしての『現金・預金』の構成比が、54.2%と多く、できるだけお金を動かさないようです。
これに比べ、米国の『現金・預金』は、13.7%と低く、逆に、『株式等・投資信託』の構成比が、44.8%とお金を動かす意識が高くなっています。
このようにお金を動かさないから、日本では、『低消費』が続くのです。
そうなると、企業は、輸入コストが増えたとしても、なかなか値上げができず、『低物価』のままになります。
そのため、輸入コストを補うために、さらに『低賃金』でコストダウンしようと考えるのです。
この『低賃金』→『低消費』→『低物価』が、さらに『低賃金』につながり、悪い循環が繰り返されることになります。
これが、日本の物価が上がらない理由なのです。
今、欧米では、インフレ対策の1つとして、『金融の引き締め』に移ろうと、『利上げ』を考えています。
しかし、日本は、それでもまだ、『金融緩和』を継続すると発表しているのです。
そうすると、『円安』はさらに進み、『輸入コスト』はますます上昇し、『コストアップ』は大きな問題になって行くことでしょう。
では、どうすればいいのでしょうか?
一番簡単な方法は、やっぱり『値上げ』です。
そのために、『品質技術アップ』や『サービスの組み合わせ』、『接客技術アップ』などで、価値のアップを考えて行きましょう。
これをすると、利益を増やすことができるので、『低賃金の改善』につなげやすくなるのです。
もちろん、これができるのは一部の企業だけかもしれません。
それでも、やったところは、『低賃金』→『低消費』→『低物価』の悪い循環から抜け出すことができるのです。
今年の『値上げ』は、それくらい重要なテーマになります。
一度、真剣に考えてみて下さいね。
最後まで読んでいただいてありがとうございました。
伊丹芳則