こんにちは、値上げの専門家(中小企業診断士)の伊丹芳則です。
昔ばなしのくだりは、次のような有名な出だしで始まります。
◆『むかし、むかし、あるところに、おじいさんとおばあさんがいました』
では、なぜこのような出だしで始まるのでしょうか?
それは、
◆(A)『いつ』という時代設定
◆(B)『どこで』という場所設定
◆(C)『誰が』という人物設定
これら全てを、あえて曖昧にすることで、『不特定多数の読者』に、興味を持ってもらおうとしているからです。
このようにすると、全ての場合に当てはまり、誰にでも作者が言いたいことを伝えられます。
昔ばなしの多くは、教訓や戒め、常識や道徳などの内容が多いです。
幼い子供に興味を持たせながら、教えようと考えられています。
これは、とても大切なことです。
しかし、『商品を売る』となると、この『昔ばなしスタイル』ではいけません。
なぜなら、誰にでも対応できる商品は、ほとんどないからです。
それでも、このような『昔ばなしスタイル』を、よく見かけます。
<例えば>『昔ばなし集客』
集客のために折り込みチラシを行う場合
チラシ期間であれば、チラシの折り込みが入った人も、チラシの折り込みが入らなかった人でも、いつでも、どこでも、誰であったとしても、チラシの特典である割引きが受けられます。
例え、チラシの割引きを知らなくて、定価で購入しようとしているお客さんであったとしても、割引きしてしまうのです。
<例えば>『昔ばなし商品』
店内看板やPOPで商品を伝える場合
商品のみの説明で、季節が変わっても、どこの誰であっても関係なく、ただ商品の特徴だけを、1年中おすすめしています。
<例えば>『昔ばなし接客』
お客さんへの接客の場合
どんな時、どんな場面、どんな気持ちのお客さんの出来事の悩みなのか聞こうとせず、ただ、お客さんが求める商品を売ってしまう。
これを昔ばなし風にすると、
『むかし、むかし、あるところで、おじいさんとおばあさんがいました』
『おじいさんがお店に来ました』
『おじいさんが、この商品を下さいと言われたので、売りました』
『ところが、その商品を持ち帰ったおじいさんは、自分が間違った商品を買ってしまったことに気付きました』
『そして、おばあさんに、ごめん、間違って買ってしまった』
『すると、おばあさんは、誰にでも間違いはありますよ、おじいさん!』
『と、優しく声を掛けました』
『とてもがっかりしましたが、自分が間違えたので、仕方ないとおじいさんはあきらめました』
ちょっと変な昔ばなしですが、『どこが、昔ばなし接客なのか?』、分かりますか?
ポイントは、『おじいさんが、この商品を下さいと言われたので、売りました』です。
どこが変かと言うと、
しっかりと接客しているお店なら、おじいさんにこのように言われたら、『どうされたのですか?』とか、『何に使われるのですか?』と、声掛けします。
すると、おじいさんは、『こんなことがあって、このように使う商品を探しています』と、答えることでしょう。
この答えから、おじいさんの事情が分かるので、『それなら、この商品ではなく、こちらの商品の方がいいですよ!』と、優しく伝えることができたはずです。
そうすると、おじいさんは間違えなくて、がっかりしなかったことでしょう。
これらの『昔ばなしスタイル』の問題は、『不特定多数のお客さんに売ろう』とするところにあります。
今までは、それでも良かったかもしれません。
しかし、これからは、『特定少数のお客さんに売ろう』としなければ、成り立たなくなっているのです。
今回のようにお客さんはみんな、『物分かりの良いおじいさんやおばあさん』だと思っていたら、そのうちあなたのお店から、お客さんがどんどん離れて行くことでしょう。
不特定多数の『昔ばなし』より、特定少数の『現実ばなし』をお客さんは期待しています。
現状のスタイルを見直してみませんか?
最後まで読んでいただきありがとうございました。
伊丹芳則