以前に、販促相談員が もしも『決算書』を見るとしたら、どこから見るのか? というブログ記事を書きました。
決算書を見れば、会社の今の状態は、『現金が残る体質なのか?』、それとも、『現金が残らない体質なのか?』が分かるし、『借入金の元金を返済する』に見合う、『税引後の利益などが十分にあるのか?』が、6つの項目をチェックすることで簡単に分かると書きました。
しかし、『どこを見ればいいのか、分かりにくい・・・』という声があり、今回は、その6つの項目を図で表し、理解を深めてもらいたいと思った次第です。
下の図が、財務諸表と言われる2つの代表的なものになります。
◆『貸借対照表(B/S)』
ある時点で、『集めたお金と、使ったお金の残高』を比べた書類
◆『損益計算書(P/L)』
1年間で、『どれだけ儲かったのか、損したのか』を計算した書類
最初は、6つの項目のうちの3つの項目を、『貸借対照表(B/S)』から見ます。

〇の中の数字は、見て行く順番です。
(1)まずは、『純資産合計』から見ます。
ここが、プラスならいいのですが、マイナスになっていれば、『現金が残らない体質』になっていると言えるでしょう。
(2)もしも、『純資産合計』がマイナスならば、次は、『長期借入金』を見ます。
『長期借入金』の残高も大切ですが、ここで重要なのは、『長期借入金の元金返済額』です。
(3)そして、『現預金』がいくらあるのか?を見ます。
これは、借入金等で集めてきたお金が、今どれだけ残っているのかを見るためです。
いくら借入金が多くても、それに見合う『現預金』があれば、何も問題はありません。
しかし、大抵の場合、借入金の多い会社では、『現預金』はそれほど多くないのが現状です。
ここまでで、注意が必要な会社の特徴は、
◆『純資産合計』がマイナス
◆『長期借入金の元金返済額』が多い
◆『現預金』が少ない
こんな特徴がある会社は、次の『損益計算書(P/L)』で残りの3つの項目を見ます。

(4)ここで、最初に見るのは、『税引後利益』です。
先程の『長期借入金の元金返済額』をまかなえるだけの利益があれば、問題はありません。
しかし、ほとんどは、まかなえないことのほうが多いです。
(5)そうなれば、次の『減価償却費』の項目を見ます。
この項目が多ければ、『長期借入金の元金返済額』をおぎなうことができるのです。
しかし、『減価償却費』だけで、おぎなえることは稀だと思います。
(6)そして、最後が『売上高』です。
これは、このような結果になったのは、『必要な利益を生み出すだけの売上げ』が少ない場合が多く、『現状いくらの売上げがあるのか?』を見なければいけません。
こんな感じで、6つの項目をまずチェックします。
これだけで、『長期借入金の元金返済額が、返済できるのか?』が判断できるのです。
では、『なぜ、元金返済ができるかどうか?』を調べなければいけないのでしょうか?
それは、現状の長期借入金の元金返済ができなければ、『借入金の返済のための借入金』が必要になってしまうからです。
しかし、『長期借入金の元金返済額の返済』に対する意識が薄い会社は、このことに気付かず、借入金がどんどん増えて行き気付いたころには、かなりやばい状態になっています。
そうならないためにも、この6つの項目をチェックして、事前に気付く必要があるのです。
ここで、とてもシンプルですが、とても重要な公式を紹介します。
先程からの説明を、一つの式にした感じです。
◆『税引後利益+減価償却費>元金返済額』
この式が成り立つようになれば、『長期借入金』が減り始め、マイナスである『純資産合計』が改善されていくのです。
ここで、1つ注意するポイントがあります。
それは、税引後利益は、文字通り法人税等の税金を支払った後の利益です。
なので、本来ならば法人税等の税金のことも考慮にいれなければいけません。
しかし、借入金の多い会社の場合は、大抵、『繰り越し欠損金』を多く積んでいます。
この『繰り越し欠損金』は、極端な言い方をすれば、『利益を上げても税金を払わなくてもよい権利』のようなものです。
通常9年間の欠損金が繰り越され、当期利益と今までの欠損金分を合算させることができます。
なので、今、いくらの『繰り越し欠損金』があるのか?を、調べておくことも必要です。
調べ方は簡単で、『決算書の別表七(一)』を見ればすぐに分かります。
『6つの項目+繰り越し欠損金』を一度チェックしてみて下さい。
そして、借入金が多い会社は、下の式を意識て、当面の目標を『元金返済額』が支払える利益を確保することとして下さい。
◆『税引後利益+減価償却費>元金返済額』
きっと、今まで見えなかった会社の状態が見えるようになりますよ。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
伊丹芳則