こんにちは、販促相談員の伊丹芳則です。
昔の話で恐縮ですが、今から30~40年前に、注文住宅の現場監督をやっていました。
約10年間で、200棟余りの住宅を完成し、お引き渡ししたと思います。
1棟の住宅を建てるのに、色々な職人さんの協力が必要です。
その中でも、大工さんとの関わりが一番多くなります。
特に、大工さんの棟梁とは、どうしても関わり方が深いです。
今とは違って、まだ徒弟制が残っていて、大工さんの棟梁には、数人のお弟子さんがいました。
棟梁はお弟子さんに日常の中で技術を伝えていくのですが、『やり方を教えない』のです。
では、どうするかと言うと、『やって見せて、やらせる』。
ただ、これだけです。
お弟子さんが、恐々『これどうすればいいのですか?』と、聞いたとしても、『自分で考えて、やってみろ』と言ってそれ以上何も教えません。
機嫌がよければ、『やってみるから、よく見ておけ』と言うくらいです。
今でしたら、何かを覚える時は、マニュアルのような情報があって、『やり方や手順』を覚えていけばいいように思います。
確かに、そのほうが効率が良くて、早くできそうです。
大工さんの場合も、マニュアルのような情報でなくても、口頭で分かりやすく丁寧に『やり方や手順』を教えてあげればいいと思います。
しかし、先ほどの大工さんの棟梁は、どうしてもそのような教え方をしません。
なぜなら、棟梁いわく、他人に教えてもらったことは、『すぐに忘れてしまうから』と言うのです。
それと、教えることには、『言葉にできること』と、『言葉にできない感覚のようなこと』があって、どちらかいうと、感覚のほうが大切なことが多いとも言います。
なので、自分で考えて、自分で気付かなければ、言葉は悪いですがいつまでたっても『半人前』なのです。
住宅を1棟建てるには、大工さんだけでも様々な工程や作業を覚えなければいけません。
頭で覚えたことを思い出しながらやるのではなく、考えなくても勝手に身体が動くようにならないと、使い者にならないのです。
早く、『1人前』になってもらいたいために、棟梁はあえて『やり方を教えない方法』を取っています。
言い方を変えれば、『学び方を身に付けさせている』ような気がするのです。
これは大工さんだけに限らず、職人さんの世界では当たり前の話になります。
たぶん、スポーツや芸術の世界でも同じことが言えるでしょう。
今まで、学校を始め、多くの企業やお店で、『やり方を教えること』が良いことと考えられて来ました。
確かに、お店が指示した作業を、早くこなしてもらうのは、悪いことではありません。
しかし、それでは、いつまでたっても、『半人前』のスタッフさんしか育たないということです。
そうではなく、自分で考えて、自分で気付けるように、『学び方を身に付けさせる』ことが大切なような気がします。
最近、このような解釈が、一部の学校や塾、企業やお店で広がっているようです。
職人の世界で、『1人前』になるのに、約10年がかかると言われています。
しかし、『学び方を身に付けさせる』のは、そんなに時間はかかりません。
一度、学び方を身につければ、どんどん応用ができます。
できるだけ早い時期に、『やり方よりも学び方』を身に付けさえてあげて下さい。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
伊丹芳則