続・付き人奮闘記 106 | chihiroの気まぐれブログ・これからも嵐と共に

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2021年1月。嵐さんの休業を機に、妄想小説を書き始めました。
主役は智くんで、メンバーも誰かしら登場します。ラブ系は苦手なので書けませんが、興味のある方はお立ち寄りください。

 

 

 

翼もSNSはやっていない。

ファッション関係の仕事もしているしブランドも持っているので、

SNSで着こなしを教えて欲しいというファンの声も多いけど、ブランドの方ではスタッフが

SNSをやっていてそこにたまに着こなしの写真をあげるくらいだ。

 

動画ばかりは無理にやらせる事ではない。

風磨と樹がやっているから、たまに双方の動画に出させて貰えればいいかもしれない。

 

 

3人のデビューは順調に進んだ。

最早、隼人の不祥事も遠い過去になってしまった感じだ。

でも仕事が順調であればあるほど、隼人の悩みも深くなる。

 

でも二人には心配をかけたくないのか、その愚痴のはけ口は俺になる。

愚痴と言うよりは自分の存在意義を確かめたかったのだと思う。

話の最後に必ず、

 

「俺、ここにいていいんだよね。3人とやっていていいんだよね」と聞いてくる。

 

不安なんだろうなと思う。どれだけ頑張っても隼人の中ではあの事件は消えない。

警察の取り調べを受けたと言うだけでも、普通の感覚の人間にとっては大きな出来事だ。

時々車の中で寝ていてうなされる事もある。多分、普段もあるのだろう。

 

隼人も早く結婚すれば落ち着くのかな。この苦しみは一生消えないだろうけど、

共有してくれる家族が出来ればまた変わってくるかもしれない。

 

とは言え、漸くデビューして軌道に乗り始めたばかり。

今は仕事が優先だ。

 

 

そんな事を考えたのも翼と住んでいるからだろう。

由夏ちゃんは子供を産んで2ヵ月が過ぎたけどまだ帰って来ない。

まだ無理は出来ないのかな。

 

そんな時に3人を送って家に帰ったら由夏ちゃんが夕飯を作ってくれていた。

翼はまだドラマの撮影の最中。今日も何時になるかわからない。

 

「由夏ちゃん、来てたの?」

 

「すみません。随分とお世話になって」

 

「ううん。俺は大丈夫だけど……」

 

 

なんとなく元気がないなと思ったら、

「智さん、ちょっと話を聞いてくれますか?」

 

少し思いつめた表情だ。

 

「どうしたの?」

 

「私、早くここに帰ってきたいんです。本当は産後1ヶ月くらいで帰る予定だったんですけど、

 翼くんがドラマが終わるまでは家にいた方が良いと言って…。

 確かに今は夜泣きが結構あるので翼くんの仕事に影響してもいけないと

 思ってはいるんですけど、別の部屋で寝ていれば平気だと思うんです。

 何よりも家族なのに、親子なのに、こんなに別れているのが辛くて……」

 

「そうだね。ゴメンね、俺が一緒に住んでいるから翼も親になったという意識が

 薄いのかもしれないね。俺が早く出て行けば良かったね」

 

「違います。智さんには本当にお世話になりました。お母さんのお葬式までやって貰って、

 智さんがいなかったら彼は立ち直れなかったと思います。

 だけど、そろそろ私がやらなければいけない事なんじゃないかと思って、

 智さんには感謝しています。本当です」

 

子供が生まれて2か月。

俺がもっと早く翼と話すべきだった。

 

いつまでも子供と離れて暮らしていたら親になったという自覚もなくなってくる。

 

 

早速、相葉くんに連絡をして、翼の終わりが何時頃になるか聞いたら、

「今日は早めに終わったからもうすぐ着くよ」というLINEが帰って来た。

 

「良かったね。翼、もうすぐ帰ってくるって。

 良い機会だから思っている事を全部言った方が良いよ。

 俺はちょっと外で食事でもしてくるよ」

 

「夕飯なら作ってありますし、智さんも一緒にいてください。

 多分、翼くんもそれを望むと思います。第三者がいてくれた方が良いんです。

 感情的にならない為にも……」

 

 

やっぱり彼女は賢いなぁ。お互いの気持ちがぶつからないようにと気を遣っている。

 

前に俺の姉ちゃんが言っていた。

 

「やっぱり実際に子供を産んだ女性の方が、

 親になったと言う自覚が芽生えるのが早いのよ」

 

その時はなんとなく聞いていたけど、今、由夏ちゃんを見ているとそんな気がしてくる。

早く翼にも子供と一緒に暮らして欲しい。そうすれば段々と父親になってくれると思う。

 

 

翼はいつものように帰ってきて、由夏ちゃんが迎えに出たので驚いている。

 

「子どもは?」

 

「連れて来てないわよ。今日はちゃんと話をしたかったから」

 

「話?」

 

「私、いつここに戻ってきたら良い?」

 

「それはまだ俺のドラマが終わらないし、もう少し先で良いよ」

 

「どうして今だとダメなの。夜泣きはあるけど別の部屋に寝ていれば大丈夫だし、

 それでもうるさければ外に連れて行くから」

 

「そんな事は言ってないよ」

 

「だったらどうして?翼くんにも早く子供の可愛さを知って欲しいの。

 父親になって欲しいのよ」

 

翼が黙ってしまった。

 

これは夫婦の問題だけど、ちょっと口を出しても良いかな。

 

「翼は何を怖がってるの?」

 

翼がドキッと俺を見て、由夏ちゃんもビックリしたように俺を見る。

 

 

「怖がってる?」

 

「俺にはそう言う気がするんだ。だから都合の良い事を言って逃げている気がするんだよ。

 翼ももう父親なんだよ。不安があるなら由夏ちゃんに全部話さないと……」

 

 

「大野さん、俺が今やっているドラマの内容知ってる?」

 

「やっぱりそれが理由か…」

 

「それだけではないですけど、凄く不安になって…」

 

「ドラマの内容がどうしたんですか?」

 

「話して良いの?」

 

「少しだけならね。夫婦なんだし今は大切な時だからね」

 

 

でも、それが原因なら心配はないな。