続・付き人奮闘記 105 | chihiroの気まぐれブログ・これからも嵐と共に

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2021年1月。嵐さんの休業を機に、妄想小説を書き始めました。
主役は智くんで、メンバーも誰かしら登場します。ラブ系は苦手なので書けませんが、興味のある方はお立ち寄りください。

 

 

 

翼が仕事に行く前に、

 

「近いうちにお墓参り行って報告してきたいけど、智さん付き合ってくれる?」

 

「それは勿論だけど、ドラマの撮影に入ったら時間があるかな?」

 

「少しでも良いんだ。午後から仕事なら早朝に出発して行かれるし、

 でも隼人達のデビューも近いしね、もし無理なら俺一人で行ってくる」

 

「それはダメ。行く時は俺が付いて行くから」

 

確かに隼人達も忙しくなってくるけど、お墓参りだけは絶対に一緒に行きたい。

 

翼の家にある仏壇には、お母さんの写真と和馬の写真が飾られている。

今までは和馬の写真だけが写真立てに飾られていたけど、お母さんが亡くなって仏壇を

田舎から持ってきて翼の家に置くようになった。

 

俺も朝と晩には必ず手を合わせるのが日課になった。

 

和馬の写真に話しかけていると、今まで以上に和馬を身近に感じる。

「翼を頼むな」と言われているような気がして身が引き締まる。

 

でも由夏ちゃんが帰ってきたら俺は自分の家に帰る。

それが今から寂しくてたまらなくなる。

 

 

そんな中で隼人達3人のデビューが近づいてくる。

今日はCDが出来上がって来た。

パート分けでレコーディングしていないから、何処を誰が歌っているかはCDになるまで

殆どわからない。ここで一つ問題が起きた。

歌割は3人が割と平等に分けられているけど、肝心の樹のラップがない。

俺はこのグループは樹のラップが一つの要だと思っていたのでこれでは納得がいかない。

 

「どういうことですか?」

 

大橋さんに聞く。

 

「俺はレコーディングしか関わっていない。他のスタッフに聞いてくれ」

 

「無責任じゃないですか。レコーディングに関わったなら最後まで責任を持ってくださいよ」

 

「俺も若くはないんだよ。独立してからはほぼこのやり方だよ。

 すまんな。最初に言っておけば良かったな」

 

思えば俺が現役の時からやっている。

年を取るのも当然だ。引き受けてくれただけでも有難いのに、無責任なのは俺の方だ。

 

大橋さんからスタッフを教えて貰って彼にラップを外した理由を聞く。

 

「最後まで意見が割れたんだ。でもこの歌にはラップはない方が良いと思ったんだ。

 田中の持ち味は勿論ラップだけど、それ以外でも良い声を出すよ。

 一度、まっさらな気持ちで聞いてみて」

 

このスタッフも昔からいるベテランだ。

彼に言われて改めて聞いてみると、なるほどラップがない方がこの曲は良いかもしれない。

 

それにカップリングはラップ要素が多い。そっちでバランスが取れているのかもしれない。

 

樹にも「デビュー曲だからラップを入れたかったけどゴメンね」と謝ったら、

「別に気にしていません。ソロの時は殆どラップは歌っていませんから」と言われた。

 

確かにソロの時はカップリングやアルバムに入れるくらいで、殆どがリズム重視になる。

 

だけどこれは3人でのデビュー曲。スタートの曲だ。

ラップを入れたかったという思いはずっと俺の中にあった。

 

そうしたらこの曲を引っ提げての初めてのテレビ歌唱の時に大橋さんが、

「この辺ならラップを入れられるぞ。やってみるか」と言ってくれた。

 

樹に相談したら大喜びで時間のない中でラップを作ってきて、

3人でのテレビ歌唱はラップ入りの曲になった。

 

CDとテレビなどでの歌唱が変わる事はたまにある。

それ以降、ラップのあるバージョンとないバージョンと、両方を使い分けて歌っていた。

ファンの間ではどちらも人気だった。

 

 

3人のCDデビューの少し前に、朝番組の3人でのコーナーの1回目のロケが行われた。

とうとう始まった番組。初回は風磨の拘りの物のロケからスタート。

ロケ嫌いの隼人の為に隼人はお店の周りの散歩ロケ。

これならお店に入らないで良いし、それでいてちゃんと仕事も出来る。

 

お店の周りを歩くのも結構面白い。

今回は都内だけど、地方へ行くともっと発見があるかもしれない。

隼人の紹介の番の時はどうするかが問題だけど、最初の打ち合わせから少し内容が変わって、

ロケに出るのは月に1度になった。後はスタジオでの放送なので大丈夫だろう。

 

 

そしてこの朝の生放送の3日前に、とうとう3人のデビュー曲が発売された。

色々とあったけど晴れてデビューの日を迎えた。

 

当日は風磨がレギュラーで出ている朝の情報番組に出演の日でもないのに呼んで貰って、

デビュー曲を披露したり、その日1日あちこちの番組に出させて貰った。

デビュー前から有名な3人と言う事もあって、恵まれたデビュー当日になった。

 

でも本当の勝負はここから。

名前が知られているからデビュー曲はそこそこ売れるだろうという予想はあった。

 

そんな時に3人で動画をやらないかと言う話があった。

今はすっかり動画配信が多くなっている。テレビよりも人気だと聞く。

最初は素人ばかりだったのが今ではプロも可なり始めている。

 

まあ、うちの事務所では前の事務所から引き続いて風磨と樹がやっている。

プロジェクト時代からの翼や隼人、圭吾はやっていない。

 

だけど今回は3人でと言う事なので当然隼人も入る。

 

「外での撮影はやらないよ。スタジオで3人でトークしたり企画をやったりするだけだよ」

 

「動画は何でもありの感じが嫌なの。プライベートを切り売りしたくはない」

 

 

隼人の気持ちもわからなくはない。

 

やっている事はバラエティー番組と余り変わらないけど、動画の方がどうしても素が出る。

 

実は翼も以前同じ理由で断っている。

 

やっぱりこればかりは難しいかな。